熟年離婚、すなわち結婚20年以上の夫婦の離婚が増加傾向にあります。厚生労働省の最新統計によると、2022年の離婚全体に占める熟年離婚の割合は23.5%と過去最高を記録しました。一方で、熟年離婚には年金や財産分野など複雑な問題も伴います。本記事では、具体的な事例を交えながら、熟年離婚に伴う問題について、FPの三原由紀氏が解説します。
一生続くと思うとゾッとする…元会社員の65歳夫が“年金生活突入”で1日中ゴロゴロ。行動を監視される毎日に「熟年離婚」を決意した“フラダンス命”の妻だったが…一転、あっさり撤回したワケ【FPの助言】
離婚は得策ではない、マインドチェンジで折り合うのがベター
結局、智子さんは離婚を思いとどまることにしました。「離婚したら、今の生活水準を維持するのは難しいわ。DV(家庭内暴力)や浮気をされたわけでもないし、夫婦で暮らすメリットもあるわよね」と智子さんは考えを改めることにしました。
実は、今回の智子さんのように、夫の定年退職によって夫婦関係の危機に至ることは珍しいことではありません。学術的にも、平均寿命の進展と少産化による子育て期の短縮により、夫婦2人で過ごす期間の長期化による問題点が指摘されています。
子供が巣立ち「親役割」を終え、また、稼ぎ手としての夫が「職業役割」を終えると、夫婦に残るのは「配偶者役割」です。特に、女性は暮らしの中でケア役割(家族の世話や家事など)の大半を担うため、不満が募りやすいと言えるのです。
夫婦関係の危機を捉える指標として「結婚満足度」という指標があります。結婚経過年数とともに満足度は低下し、その後、再び上昇するという説がありますが、女性に関しては低下したままで、熟年離婚の主な原因となることも示されています。
ただし、希望もあります。夫婦の会話などコミュニケーションを大切にすることや夫の家事参加の増加によって満足度が再び高まることも示されています。夫の家事参加とは、分担の公平性ではなく、夫婦が折り合える分担度であることです。
今後、智子さんと幸男さんが、関係性を再構築することでより幸福な老後を過ごせることを願ってやみません。
三原 由紀
プレ定年専門FP®