老人ホームに入所…決め手は「美味しい食事」
中村知子さん(仮名・57歳)が母親(80歳)とともに老人ホームを探し始めて半年。その間、10軒のホームを見学したといいます。
父親が10年前に亡くなってから、実家で1人暮らしをしていた母親。80代になった今も健康そのものですが、ある日、近所で孤独死した高齢者が。このことがきっかけで1人暮らしに不安を感じるようになり、老人ホームへの入所を検討するようになったといいます。
絶対条件となる費用は、初期費用となる入居一時金は1,000万円まで。月額費用は、母親の年金月17万円に加えて、最大プラス5万円まで。ロケーションへのこだわりは特になく、何かあった際に知子さんが駆けつけることができるよう、知子さんの自宅から車で1時間圏内を条件としていました。
しかし、見学をすればするほど、今どきの老人ホーム事情がわかり、「もっといいところがあるのではないか」と決めきれずにいたといいます。
最終的に決めた老人ホームは、見学10軒目。知子さんも母親も初めて意見が一致し、入所を決めたといいます。入居一時金800万円、月額費用20万円、知子さんの自宅から下道利用で40分のロケーション。医療と介護体制が整っていて、終身利用も可能です。また何といっても決め手となったのは食事。提供される3食のうち、朝は2食、夕方は3食から選択可能。週に1度は特別メニューが提供され、行事食の際にはフルコースが提供されることも。
10軒も見たんだから間違いないと意気揚々と入所した知子さんの母親。思っていた通り、食事に対する満足度が高いようで、よく料理の写真が送られてきたそうです。
――ここじゃない、ここでもないと見学を繰り返していたときは、一生決まらないのではないか、と思っていました
そう胸をなで下ろしていた知子さん。しかし、ある日、事件が起きます。その日、知子さんの携帯電話に1本の電話。母親が暮らすホームからでした。嫌な予感がして電話に出ると、母親の姿が見当たらないと焦るホームのスタッフでした。80歳の母親。健康そのもので、ホームでもよく散歩に出かけているといっていました。
――まさか、事故にでもあったのでは
血の気が引いたという知子さん。急いでホームに駆けつけようと、車の鍵を手にしたとき、今度は自宅のチャイムが鳴りました。「こんなときに、なに!」と出てみると、そこにいたのは知子さんの母親だったといいます。