内科医の橋本将吉氏は著書『「老いても元気な人」と「どんどん衰えていく人」ではなにが違うのか』で血管がいかに老化対策に必要かを説いています。一体どうしてでしょうか? その理由を著書から説明します。
高血圧になる原因はなに?
高血圧になる原因はさまざまありますが、その主な原因の1つが、塩分のとりすぎだとされています。塩分の中には、ナトリウムという物質が含まれており、これが水を引き寄せるという性質を持っています。なめくじに塩をかけたらどうなるでしょう。そう、しぼんでしまいますね。あれも、このナトリウムの力なんです。
ナメクジの体の中の約90%は水です。塩を振りかけると、塩の中のナトリウムが体の中の水分を外に出してしまうというわけなんです。それと同じようなことが体内でも起こります。塩分を多くとると、血中にナトリウムが増えます。すると、血中のナトリウムが細胞にある水をどんどんと、血液の中に引き寄せ、血管の水分量が増えて、血管がパンパンになってしまうんです。
そうなると、血液が血管を押す圧力は強まる=血圧が高くなるのです。水風船は、少ない水だと簡単に割れませんが、パンパンに水を入れたら割れやすくなりますよね。それと同じで、大量の血液が、暴徒のように荒々しく血管に圧力をかけ、血管が傷つきやすくなるというわけなんです。
もう1つの原因が体重です。「体重?」と思った方はアリと象を思い浮かべてみてください。アリが全身に血液を送る力と象が全身に血液を送る力、どちらのほうが強いでしょうか。当然、象のほうが強い力が必要になります。
これは極端な例ですが、人間におきかえても同じことが言え、体重が重いと、全身に血液を回すために、心臓はものすごい勢いで血液を送り出す必要があります。結果、血圧が高くなる傾向があるというわけです。統計的にも体重が落ちると血圧が下がるというデータもあります。
続いての原因がストレスです。暑くなったら、体温を下げるために汗をかかせたり、夜になったら、眠るために体をリラックスさせたり、体を健康に維持するために、さまざまな器官に指令を伝えているのが、自律神経と呼ばれる神経です。自律神経には、交感神経と副交感神経の2種類があります。
例えば日中、体を活発に動かしたいときに優位に働くのが、交感神経、逆に、体を休めるときに優位に働くのが、副交感神経です。この2つがバランスをとりながら働き、私たちの体は健康が保たれています。ストレスがかかっている状態というのは、いわゆる心身に負荷がかかっていて危険にさらされている状態です。
そのため、体は活発に動いて、その危険に立ち向かおうと判断して、交感神経が優位に働き始めるのです。活発に動くためにはエネルギーが必要なので、エネルギーを体中に急いで運ばなければなりません。そこで、交感神経は血管を収縮して、水道のホースをつまんだときと同じ原理で、血流を速くします。血流が速くなるということは、血圧が上がるということです。
つまり、ストレスがかかり続けている状態では、血圧が高くなり続ける危険性があるのです。ほかにも運動不足や多量の飲酒など、さまざまなことが関係しているとされていますが、主には塩分、体重、ストレスだと考えています。高血圧と診断された人は、その3つには特に気をつけるようにしてください。
橋本将吉
内科医