(※写真はイメージです/PIXTA)

人口減少基調にある日本。人口が集中する首都圏においても例外ではありません。そのようななか、今後、どこが投資エリアとして有望なのでしょうか。不動産投資の検討において重要な要素のひとつ「人口」に注目をして考察していきます。今回注目するのは「神奈川県相模原市」。

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東京都心と横浜方面にアクセス至便…相模原市内「小田急沿線」エリア

神奈川県には3つの政令指定都市があります。ひとつが市としては最大の人口を誇る「横浜市」、人口155万人を突破し市政100周年を迎えた「川崎市」、そして、2010年に政令指定都市に移行し、人口70万人を抱える「相模原市」です。

 

相模原市は、緑区、中央区、南区の3区で構成し、北で東京都八王子市など、東で東京都町田市など、南で神奈川県座間市や寒川町など、西で山梨県上野原市などと隣接しています。東京のベッドタウンとして発展してきた一方で、複数の町が合併してできたという歴史から、橋本や相模大野など、商業や交通の拠点となる中心市街地が複数点在するのも特徴。また、青山大学や麻布大学、北里大学など、大学をはじめとした教育機関が多数点在することから、若年層の流入が多いことでも知られています。

 

市内にはJRや京王電鉄、小田急電鉄の3つの鉄道会社の複数路線が走り、東京都心と横浜方面を結んでいます。新宿を発車した小田急線は、相模原市内の「相模大野」駅で、小田原方面に向かう電車と、藤沢、江の島方面に向かう電車に分かれます。市内にある小田急電鉄の駅は、「相模大野」のほか、当駅からひとつ小田原方面にいった「小田急相模原」と、当駅から藤沢方面にいった「東林間」の3つ。これらの3駅周辺は、東京都心方面へのアクセスのほか、小田急電鉄では藤沢方面、さらに「相模大野」からひと駅新宿よりの「町田」では横浜方面にもアクセスできる、交通至便なエリアとして知られています。

 

「相模大野」は相模原市南部の中核駅。副駅名として「相模女子大学最寄駅」が設定されています。北口には「岡田屋モアーズ」や「bono相模大野」といった商業施設が点在。また2019年まで営業していた「伊勢丹相模原店」の跡地には、2025年に41階建、住商一体型タワーマンション「プラウドタワー相模大野クロス」が誕生する予定です。

 

「小田急相模原」は相模原市と座間市の地域拠点として、近年、再開発事業が進み、ベットタウンとして人口が急増しているエリアです。北口には地上20階の再開発ビル「ラクアル・オダサガ」や、29階の再開発ビル「ペアナードオダサガ」が林立。「独立行政法人相模原病院」まのびる「サウザンロード相模台商店街」にはバラエティに富む商店が並びます。

 

「東林間」は相模原市の駅としては最東端に位置する駅で、ほか2駅と比べると目立った商業の集積は見られず、駅周辺には閑静な住宅街が広がっています。

 

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ファミリー層から支持が厚い「相模大野」…人口減少の影響は?

相模大野駅

では相模原市と同市小田急沿線エリアの現況についてみていきましょう。

 

2020年に行われた国勢調査によると、相模原市の人口は72万5,493人。5年前調査72万0,779人から0.6%の増加。小田急線沿線の相模原市南区は人口28万1,411人。5年前調査27万7,280から1.49%増と、相模原市全体のなかでも人口増加の中心となっています。

 

平均年齢は市全体では46.73歳、南区に限ると46.72歳です。神奈川県平均46.45歳と比較すると高齢化が進んでいる地域といえます。相模原市、及び同市南区には市街地化されていないエリアも残り、それらの地域では高齢化が顕著で、全体の平均年齢を上げていると考えられます。

 

人口分布を人口ピラミッド(図表1)でみていくと、ボリュームゾーンは40代~50代の働き盛り。20代で減ること一定数を保っているのは、教育機関が多く点在するエリア特性から、これらの年代の流入があるからと推測されます。

 

出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」
【図表1】相模原市南区の人口ピラミッド 出典:総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」

 

市全体の世帯数は33万2,770世帯、南区に限ると13万2,931世帯。世帯当たり構成数は市全体で2.18人、南区で2.12人。全国平均2.26人を若干上回り、核家族化が進むエリアです。

 

世帯構成について詳しくみていくと、市全体、施設入居世帯除く一般世帯33万2,249世帯のうち、単身者世帯は13万2,680世帯で、全世帯39.9%。南区の一般世帯13万2,736世帯のうち、単身者世帯は5万6,223世帯で、単身者世帯率は35.40%。相模原市の中で南区は、ファミリー層にも選ばれる地域と考えられます。人の流れをみていくと、昼間人口は56万2,799人。夜間人口は64万2,961人。昼夜間人口比率87.53%で、市外への通勤・通学者が多い、典型的なベッドタウンであることが分かります。そのため不動産投資を考えるのであれば、駅を中心に考えるのが有力な選択肢となります。

 

各駅の乗降客数をみていくと、【図表2】の通り。市南部の中核をなす「相模大野」が突出していることが分かります。一方、不動産投資の視点で考えると、商業の集積も際立つ「相模大野」周辺では物件価格が高騰し、低利回りになる可能性も。「小田急相模原」や「東林間」など、その周辺部に検討範囲を広げるのもひとつの戦略といえるでしょう。

 

出所:小田急電鉄ホームページより※数値は2023年
【図表2】相模原市内小田急沿線3駅の乗降客数 出所:小田急電鉄ホームページより※数値は2023年

 

次に家賃相場についてみていきましょう。「相模大野」周辺の家賃相場を大手住宅検索サイト3社の平均でみていくと、1Kで6.71万円、1LDKで9.78万円、2LDKで10.87万円。「小田急相模原」は、1Kで5.58万円、1LDKで9.02万円、2LDKで11.54万円。単身者向けであれば「相模大野」のほうが家賃相場は高く、2人以上向けであれば「小田急相模原」のほうが家賃相場は高くなっています。地価の高い「相模大野」よりも、「小田急相模原」のほうが広めの物件が多く、家賃相場に反映されていると考えられます。不動産投資においては、物件取得後の利回りに大きく影響するので、取得予定の物件価格と、家賃水準のバランスはしっかり見極めたいところです。

 

そんな相模原市の将来像をみていきましょう。国立社会保障・人口問題研究所の推計のなかで、最も楽観的なシミュレーションでは、今後も緩やかに人口増加が続き、2040年には71万6,114万人。2060年を超えると、70万人を割り込むという緩やかな人口減少となります。一方、現実的なパターンでは、2040年には70万人を割り込み、2060年には60万人強という予測がされています。(図表3)

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成 ※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計準拠) シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション。
【図表3】相模原市の人口推計 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成 ※パターン1:全国の移動率が今後一定程度縮小すると仮定した推計(社人研推計準拠) シミュレーション1:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇したとした場合のシミュレーション シミュレーション2:合計特殊出生率が人口置換水準(人口を長期的に一定に保てる水準の2.1)まで上昇し、かつ人口移動が均衡したとした(移動がゼロとなった)場合のシミュレーション。

 

2015年時点での人口を100とした際の年齢別の人口推計をみていくと、2030年、15歳未満の人口は81.17、15~64歳人口が90.26。一方で老年人口は121.19で、2045年ごろピークを迎えます。今後、高齢化が加速し、生産年齢人口は2040年に77.03、2060年に63.00の水準まで落ち込みます(図表4)

 

出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成
【図表4】年齢3区相模原市分別人口推移 出所:国立社会保障・人口問題研究所「日本の地域別将来推計人口」に基づきまち・ひと・しごと創生本部作成

 

東京都心にも、横浜方面にもアクセス至便、かつ、教育機関が多く点在する相模原市、小田急線沿線。エリアの特性上、若年層のニーズが高いものの、市全体では市街地化されていない地域が多く残るため、高齢化が加速していくと考えられます。このような局面において、交通至便な駅周辺にこだわることが、不動産投資に勝つ第一歩。そのなかで、人口減少局面においてはさらに物件間の競争が激しくなります。賃貸ニーズを的確につかみ、応えていく賃貸管理の重要性がさらに増していくといえるでしょう。

 

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