国内外で急速に活用が広がっている「生成AI」。従来のAIとは異なり、テキストや画像、音声、動画、音楽など、新しいコンテンツを生成する能力を持った人工知能の一種です。米オープンAIのAIチャットサービス「ChatGPT」をはじめ、実用的なツールが次々に登場し、ビジネスシーンや日常生活に浸透しつつあります。業務の効率化はもちろん、クリエイティビティや日々の暮らしにも役立つツールとして発展が期待できる生成AIは、現在、あらゆる業界において、積極的な活用が始まっています。そこで今回は、身近に活用されている生成AIのサービスや企業の取り組みを紹介します。
夏休みの自由研究、転職活動、フリマアプリの出品…急速に発展する「生成AI」、身近な活用事例は?

 ※本稿は、テック系メディアサイト『iX+(イクタス)』からの転載記事です。

自由研究のテーマ探しをサポート、子供の安全安心にも配慮した設計

昨年度の「自由研究お助けAI」(ベネッセコーポレーション提供)
昨年度の「自由研究お助けAI」(ベネッセコーポレーション提供)

 

小学生の子供を持つ家庭において、夏休みの悩みの種でもある自由研究。ベネッセコーポレーション(岡山県岡山市)の進研ゼミ小学講座では、昨年7月から、ChatGPT活用ツール「自由研究お助けAI」をスタートしています。学習向けに独自にカスタマイズした生成AIで、自由研究のアイデアやテーマを見つけるためのヒントを提供するサービスです。

 

「どのようなテーマを調べたらいいのかわからない……」というお悩みに応えてくれる、自由研究お助けAI。一つの答えを提示するのではなく、AIキャラクターとのやりとりの中で、自分では考えつかなかったアイデアやテーマを見つけることができます。

 

また、利用前の保護者によるログイン認証をはじめ、保護者と子供に向けた生成AIの使い方やルールといった情報リテラシー学習の導入など、子供の安心安全にも配慮。「“読書感想文を書いて”といった目的外の利用には回答しない」「子供が好奇心のまま単純な質問を繰り返さないよう一日の質問回数を制限する」など、さまざまな工夫も盛り込まれています。

 

生成AIの活用について、頻繁に議論が交わされている教育現場。自由研究お助けAIでは、情報漏えい対策として、入力内容を生成AIの再学習に利用しない方式が採用されています。なお、提供2年目となる今年は、よりわかりやすく使いやすいデザインに改訂し、自由研究おたすけチャットとして、会員向けに提供中です。また、昨年の好評を受けて、今年は「進研ゼミ中学講座でも同サービスを提供中ということです。

 

 

転職活動の“職務経歴書”を自動作成、スカウト受信数40%アップの成果も

GPTモデルのレジュメ自動作成機能(ビズリーチ提供)
GPTモデルのレジュメ自動作成機能(ビズリーチ提供)

 

転職サイト「ビズリーチ」を運営するビズリーチ(東京都渋谷区)は、昨年7月、東京大学マーケットデザインセンターとの共同研究で「GPTモデルのレジュメ自動作成機能」(以下、GPTツール)を検証。GPTツールを活用することで、ユーザーの職務経歴書の内容を効率的に充実させることができるサービスです。

 

総務省による労働力調査では、2023年の転職希望者数は1,007万人と7年連続で増加。転職することが一般的になった今、職務経歴書の作成は、転職活動の第一歩といえます。企業の採用担当者やヘッドハンターは、職務経歴書を確認してスカウトを送るため、自身の強みや実績をわかりやすくテキスト化できなければ、質の高いマッチング機会が得られません。

 

GPTツールは、そんな転職活動において極めて重要かつ、負担も大きい職務経歴書作成をサポート。職種やポジション、業務のミッション、業務領域など、簡単な質問に回答するだけで、生成AIが業務内容のテキストを自動で作成してくれます。ユーザーは、生成結果を自身で編集するだけで、プロフェッショナルな職務経歴書を作成できます。

 

キーワード入力の際も、ビズリーチ上に蓄積された膨大なデータをもとに会員に合った入力内容が推薦され、会員は推薦されたキーワードを選択あるいは入力するだけで、企業やヘッドハンターがスカウト送信の判断を行いやすい、内容が整理された業務内容を作成できるということです。

 

また、東京大学マーケットデザインセンターと同社の検証によると、GPTツールを使用して職務経歴書を更新したユーザーと、使用せずに更新したユーザーを比較したところ、GPTツールを使用したユーザーのほうが、スカウト受信数が40%向上するという成果も上げています。

 

東京大学大学院経済学研究科教授で東京大学マーケットデザインセンターセンター長の小島武仁さんは「今回の検証では、GPTツールを使ったユーザーがより多くのスカウトを受け取ることが実際に確認され、ツールの有効性の大きなエビデンスが得られたと思います。さらに実際に職務経歴書を日常的に読み込んでいるコンシェルジュによる評価も組み合わせることで、GPTツールが実際に職務経歴書の質向上に寄与しているというエビデンスも得られました。」とコメントしています。

 

よりよいスカウトを受け取るために、生成AIを活用したプロフェッショナルな職務経歴書は、必須のものとなりそうです。なお、同社では採用企業向けに求人の作成をサポートする「GPTモデルの求人自動作成機能」もリリース。2024年中にはビズリーチを導入する全企業が利用可能となる予定です。