デジタル化が進むにつれて増えつつある電子契約。紙での契約とはどのような点が異なり、その法的効力はどれほどまでに及ぶのでしょうか。電子契約のメリット・デメリットについて、弁護士法人山村法律事務所の代表弁護士である山村暢彦氏が解説します。
普及する「電子契約」だが…「紙」と同様に法的効力はある?導入する際に知っておきたい注意点【弁護士が解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

電子契約を導入する「メリット」と「デメリット」は?

電子契約のメリットとして、第一にあげられるのは「印紙代の節約」です。一定の契約類型には、契約金額に応じて、印紙を貼らなければならない、すなわち「印紙代」が発生するのですが、電子契約では、その印紙代が免除されるというメリットがあります。

 

また、紙の契約書の場合、郵送などの手間がありますが、電子契約の場合は、メールアドレスなどを利用して瞬時に契約をおこなうことができるため、郵送事務コストの省略というメリットもあげられます。

 

デメリットとなり得るのは、「技術的なエラー」です。電子契約自体は、民間会社がおこなっているサービスなので、たとえば、そのサービス運営会社が破綻してしまった場合、過去の電子契約の有効性などが、あとから判別できなくなる事態や、インターネットを介しておこなうサービスゆえに、「クラッキング」を受けた場合、情報流出の危険性があるといった懸念など、IT技術上のエラーや民間企業が管理しているという範疇で、エラーが生じる可能性も考えられます。

 

ただし、この点においては、何らかのバックアップなども予定されていると思われるため、憂慮しなくてもよいかもしれません。想定の範囲内のデメリットといえるでしょう。

 

電子契約を導入する際の注意点

前述にあげたデメリットと同様、電子契約は、民間企業が提供するサービスという前提があるので、信用ができ、サービスを継続していくことができる企業を、極力利用しておいたほうが安心です。

 

「契約書をいつまで残すか」という問題もありますが、特殊な法的規制があるものを除けば、基本的に法律は指定していません。一般的には、5年から10年の間で残しておけば、時効期間が経過するものが多く、問題ないといえるでしょう。ただし、非常に厳密に考えると、20年経過するまでは、民法上の不法行為による請求が成立することもあるので、可能であれば、契約時から20年間は保存しておくほうがベターです。

 

利便性やコストも大事ですが、契約時から20年間変わらず利用できるという観点で、電子契約サービス導入を検討するとよいかもしれません。

 

国を挙げて「電子契約」を推進している現状

電子契約の導入について、とくに、不動産取引や請負契約といった、従来からある典型的な契約類型においては、数年前まで、消極的な立場でした。しかしながら、「電子署名法」の制定や、デジタル庁の設立など、国家として、契約の電子化を推進する流れがあるのが現状です。

 

利便性の高さや印紙代の節約といったメリットも多く、より積極的に、電子契約を利用できる社会が整いつつある、といえます。

 

 

山村 暢彦

山村法律事務所

代表弁護士

 

編集:株式会社幻冬舎ゴールドオンライン


提供:ⒸイツトナLIVES(運営元:シャープファイナンス株式会社)