高齢者の住まいとして、ひとつの選択肢となっている「老人ホーム」。なかでも民間施設と比較すると安価な公的施設を希望する人は多く、常に入居希望の待機者がいるといった状況です。そのため、仕方なく多額の費用を支払って民間施設に入居せざるをえなかったという人も。今回は、山田さん(仮名)の事例とともに老人ホームの費用問題について解説します。
年金月28万円の60代両親だったが…定年退職からまもなく父が要介護2で施設へ。50代長女が「うそだ」と連呼する〈老人ホーム請求額〉【FPが解説】 (※写真はイメージです/PIXTA)

最もお金がかかるといわれる「一時金」

夫が老人ホームに入り、残された妻の生活費は具体的にいくらかかるのでしょうか。厚生労働省によると、65歳以上の単身・無職の世帯の消費支出は2022年度時点で毎月14万3,139円となりました。

 

[図表4]65歳以上の単身無職世帯(高齢単身無職世帯)の家計収支ー2022年ー

 

合わせると毎月28万円程度の出費となり、ほとんど年金は残りません。加えて、生活には老人ホームの入居費用、緊急の医療費などは含まれていません。老人ホームにもさまざまな種類があるため、いくら入居費用がかかるのかは状況によって大きく異なります。

 

入居するために用意すべき一時金でみていくと、公的施設では、数万円~10万円台と比較的安価ですが、一定以上の介護状態でなければならない、待機者が多い、などといった理由から、希望どおりのタイミングで入居できるとは限りません。そこで、公的施設と比較すると設備面やサービスが充実している民間施設についても検討してみます。しかし、大まかには数百万円から数千万円と高額な費用がかかるようです。たとえ貯金があっても、入居時点で大きく目減りしてしまうでしょう。

 

さまざまな費用を計算してみた佳代さんは、「うそでしょ? こんなにお金がかかるなんて……。うそよね、うそよね……」と何度も確認しました。

 

ほかにも、山田さん夫婦がなにかしらの病気になって治療を受けたとすると、別で費用を工面する必要があります。特に、日本人の3人に1人を悩ませる「がん」については、肺がんの場合を想定すると高額療養費制度で総額120万から160万円以上の費用がかかるといわれています。

 

老人ホームにかかる費用や残された家族の生活費。両方を勘案すると、夫婦片方が自立しているあいだはできる限り自宅で支援しながら、夫婦が両方要介護になったタイミングで2人で老人ホームに入るというライフプランニングも視野に入るのではないでしょうか。実際に、老人ホームでは2部屋契約するよりも夫婦部屋にしたほうが費用を抑えられる傾向にあります。

 

子どもがつきっきりで面倒を見られない場合、老人ホームは有力な選択肢になりえます。いざというときのために、費用はいくらかかるのか、どういうタイミングで入居を検討するのか、お住まいの地域で入居を受け入れてくれる老人ホームはあるのかなどさまざまなことを事前に調べておくことが大切になりそうです。

 

<参考>

令和6年4月分からの年金額等について|日本年金機構

https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2024/202404/0401.html

 

令和4年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況
https://www.mhlw.go.jp/content/001233406.pdf

 

サービス付き高齢者向け住宅等の月額利用料金
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12401000-Hokenkyoku-Soumuka/0000102200.pdf


統計局 2022年(令和4年) 家計の概要
https://www.stat.go.jp/data/kakei/2022np/pdf/summary.pdf

 

横手市 高齢者

https://www.city.yokote.lg.jp/faq/1001648/1001649/1002096.html

 

国立がん研究センター 中央病院

https://www.ncc.go.jp/jp/ncch/clinic/thoracic_surgery/170/index.html

 

 

北川 和哉