老後資金としていくら必要になるかは人それぞれ。どの家庭でも「我が家はこれぐらいあれば足りるかな」と考えながらお金の準備をしているのではないでしょうか。しかし、そうした計算を大きく狂わせるのが「物価の上昇」。今年の5月には「老後には4,000万円必要」という衝撃的なニュースも報道され不安が広がりました。そこで今回は、年金生活が始まるまでに2,000万円貯めた大橋さん夫婦を事例に、老後資金計画の落とし穴について南真理FPがアドバイスを交えて解説します。
こんなに働いてきて、まだ働かなきゃいけないんでしょうか…。勤続41年・64歳会社員、コツコツ貯めた「貯金2,000万円」で幸せな老後に夢膨らませるも、背後に迫り来る「老後破綻の影」【FPの助言】
インフレによる老後資産の目減り防止には事前のシミュレーションが必須
FPからの話を聞いた大橋さん夫婦、その表情は複雑です。
「現役時代にコツコツと老後のお金を貯めてきました。自由の身になって旅行やゴルフに行ったり、孫と楽しい生活を送りたくてね。でも、健康なうちに週1~2回はアルバイトをしたほうが安心かもしれません。しかし、こんなに働いてきたのに老後も自由になれないのはツライものがありますね……。年金の繰下げも含め、今後どうするのか妻と相談することにします」とのことでした。
物価の動向は、今後の世界情勢や経済状況によってどのように変動するかは断言できることではありません。しかし、昨今のエネルギー価格の高騰や円安による輸入製品の価格上昇、日本の食料自給率の低さ等々を考えると、決して楽観視できません。大橋さん夫婦は、老後の備えとして2,000万円の資産形成ができていたため物価上昇したとしても、年金の繰下げを活用するといった選択肢がありました。
しかし、事前準備もなく年金生活を迎えるとなると、老後破綻する可能性も否定できません。
「まだ先だから」と、後回しにするのではなく、ご自分の家計の場合はどうなのかを是非シミュレーションしてみてください。その上で、今回ご紹介した年金の繰下げや資産運用等、取りうる対策がないか選択肢を探すことから始めましょう。
「老後資金はしっかり準備してあるから大丈夫」と、貯蓄をしてきたからこそ盲目的になってしまっていた大橋さん夫婦を教訓に、シミュレーションに基づいた老後の資金計画を立て、現実と向き合うことが“物価上昇で老後破綻を防ぐ手段”といえるでしょう。
南 真理
ファイナンシャルプランナー