生活費を「これまで通り」支払うという宣言の裏に隠された夫の企み

4.生活費(計576万円)⇒添付書類なし

生活費については「これまで通り」と言ってきました。夫は今まで毎月12万円の生活費を振り込んでいましたが、美枝子さんはまだ61歳。65歳で年金の受給を開始するとして、それは4年も先のことです。生活費の振込を今、止められてしまうと困ります。そのため、夫は美枝子さんが61歳から65歳までの4年間、今までと同じ毎月12万円を振り込むと言うのです。

夫の最高年収は1,400万円。人並以上の年収を稼いでいたわりには財産が少ない印象です。特に預貯金の少なさが気になります。そこで筆者は「海外に住んでいたことがあるなら、現地にも口座を持っているのではないでしょうか? また外資系なら会社からストックオプションが支給されているかもしれませんよ。そして厚生年金だけでなくまた個人で運用できる企業年金にも入っている可能性もあります」と指摘。これらの内容を踏まえ、美枝子さんは再度、夫に投げかけたのです。「これが本当に全部ですか?」と。そうすると夫から以下の5,6,7の回答が届きました。

5.ストックオプション(360万円)⇒取得時の確定申告書

ストックオプションは源泉徴収の対象にないので、夫は確定申告をしなければなりません。まだ同居しているとき、美枝子さんはたまたま申告書を目にしたことがあり、そこには株式の表記があったことを思い出したそう。そのことを伝えたところ、夫はストックオプションの存在を白状したのです。

具体的には社内の成績上位者に対して株式が現物支給されるRSUタイプ。そして今まで夫は自社株を売却しておらず、保有したまま。しかも、売買可能な時期に達しています。筆者は「当時のあやふやな記憶を頼りにしてはいけません」と念押ししました。

そこで夫には当時の申告書を提示してもらったところ、裏をとることができました。もし現金化した場合、税引きで約800万円の価値があるようです。美枝子さんの取り分は360万円なので、夫は離婚時に株を売却し、美枝子さんに360万円を渡すことを約束してくれました。

6.企業年金(800万円)⇒運用先が発行したシミュレーション表

夫は60歳を過ぎた今でも同じ会社で働いています。そこで美枝子さんは会社の総務部へ確認をとりました。そうすると担当者は「旦那さんは企業年金にも入っています」と教えてくれたそう。もちろん、別居中や離婚協議中だということは伏せて。

夫にそのことを問いただしたところ、厚生年金だけでなく企業年金もあることを明らかにしたのです。それは夫が添付した運用先のシミュレーション表でも明らかでした。具体的には毎月15万円を10年間で受け取ることができるタイプ。美枝子さんの取り分は毎月6.6万円、10年間で800万円です。