資金や消費が動いた1年、シニアは「自分らしさ」を優先

「コロナ禍が明けても、世界では戦争や紛争、日本でも災害や物価高騰など苦しい状況が続いています。出生率も1.20と最低水準を更新しました。一方で、新NISA『オルカン投資』、スキマバイトによる雇用拡大、インバウンド消費、若いアスリートの活躍など、資金や消費が動いた1年でもあります」と1年を振り返ったハルメクグループ「生きかた上手研究所」所長の梅津順江(うめづ・ゆきえ)さん。

シニア層の消費トレンドについて「この世代はモノでもコトでも自分らしい選択を大事にしている。いくらお金があっても納得しないものは絶対買わないし、納得すれば高くても買う方が多い。自分に自信があるんだと思う。消費者としての大ベテラン。生活に関してもベテラン層なので目も肥えている。自分が信じて自分がいいと思ったら消費に向かうのかなと見ています。例えば、老眼鏡や補聴器など買うときに、自分が納得してオシャレだからハズキルーペでもシニアグラスではなく、ルーペと言って買う。目が衰えている私が悪いんじゃない、世の中の文字が小さいから問題なんだくらいの勢いであくまでも自分主体。自分らしい選択をするのが特徴」と話しました。

そして、今回のトレンドの選考方針について「シニア世代は、『こうあるべき』という固定観念が薄れ、自分らしい選択を行なっています。あらゆる常識から解放され、生き方・暮らし方の歩みを着実に踏み出しています。培ってきた経験に、時代の変化のスピード、新たなライフイベントや課題が加わります。これらの変化に柔軟かつ真摯に向き合いながら、若者の後追いではない独自のトレンドを生み出しています」とし「時事性と世代らしさを重視し、2024-2025年のシニアトレンドを厳選しました」とコメントを寄せました。

「デジ得シニア」「シンニーア(シニア+新NISA)」「ラストパートナー」がトレンドに

「2024-2025 ハルメクシニアトレンド」は下記の通り。

1 デジ得シニア

買い物のデジタル活用が進み、55~74歳の女性のスマホ保有率は99%に。2019年と比べた利用率は「EC」の34%が52%に、「オンライン決済」の5%が45%に、「ポイ活」の18%が43%に。新紙幣発行があったものの、3人に1人が無関心。シニアの現金離れが進んでいる。長引くインフレでデジタルを賢く使ってお得に買い物をするシニアは増えると予測。

2 シニア解放区

1980年に「新人類」と言われていた世代が還暦に。当時流行したディスコなどの文化が再燃。新しいことに挑戦して、共有体験や場を盛り上げる。「いい歳をして……」など先入観にしばられない解放区は今後も活気付いていく。

3 エイジフリーWORK

定年退職をしても、「社会との関わりを得たい」「役立っていることを実感したい」と社会参加に前向き。60~79歳の新しい仕事への意欲は23%、ボランティア参画意向は57%。今後も社会との繋がり意識や還元欲求は増大するであろうと予測。「人生二周目のタイミングに新たな領域にチャレンジしたり、自分が培ってきたスキルを社会に還元したいと欲求を強めたりするシニアが増えていくと見ています」(梅津)

4 シンニーア(シニア+新NISA)

NISA口座は年初から2484万口座から303万口座増)に。NISA口座の普及率は2022年と比べ、全体は16%→23%。50代は18%→26%、60代は18%→24%の伸び率。インフレ時代の資産運用にシニアも能動的に向き合うようになっている。

5 ラストパートナー(ラスパ)

熟年離婚が最高になる一方で、シニアの婚活が話題に。シニアの婚活日帰りバスツアーが常に満席。生き研調査では50~70代未婚男女の4人に1人がパートナーが欲しい」と回答。「年甲斐もなく」という既成概念が変わってきている。

「年甲斐もなく」「いい歳して…」からの解放

最後に梅津さんは「『年甲斐もなく』『いい歳してこんな格好をするなんて』など、年齢に基づいた偏見や差別を指す『エイジズムからの解放』がキーワード。それらを手放す流れができたことで新しいトレンドが生まれた。人生後半を彩るための探し物がいくつかある。『居場所探し』『お得な幸せ探し』『自分らしい仕上げ探し』の三つの探し物が見つかれば、『年を重ねるのは楽しい』『自分の好きやラクを生涯追求』『いつまでも社会の役に立てる』『自分を生かしきれる』など明るい未来が待っている」と総括しました。

発表会には、雑誌『ハルメク』編集長の山岡朝子さん、Netflix『あいの里』シーズン1に出演した絵本作家のみな姉さん、作詞家でWEB制作プランナー、パーソナルスタイリストの織田ゆり子さん、シルバーディスコを主宰する DJ OSSHYさんも登壇しました。

THE GOLDONLINE編集部