中高齢になると考え始めてしまうのが、高齢になった両親の健康面。Uターン転職や、場合によっては介護離職を選択する人も。しかし、待ち受ける介護や年金生活を前に、両親のことだけでなく自身のライフプランについても見通しを立てることが大切です。介護にかかる費用や日本の介護の現状について、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
あんたが世話しなきゃ…親戚の“無責任な正義”で心身ともにボロボロの年収450万円・55歳独身サラリーマン、87歳母からの「ひと言」に涙したワケ【CFPの助言】
“超高齢社会・ニッポン”の実態
超高齢社会である日本の介護の現状は、厚生労働省「介護保険事業状況報告の概要(令和6年5月暫定版)」から知ることができます。
・65歳以上の介護保険「第1号被保険者」は3,591万人。
・要介護(要支援)認定者数は、712.3万人。うち男性が227.7万人、女性が484.6万人。第1号被保険者の認定者数の割合は、約19.5%。65歳以上の5人に1人が、要介護や要支援の認定を受けている。
・居宅※(介護予防)サービス受給者数は424.7万人。
※居宅サービスは、都道府県が介護事業者を指定する。
・地域密着型※(介護予防)サービス受給者数は91.3万人。
※地域密着型サービスは、市区町村が介護事業者を指定して、サービスの基準や介護報酬なども地域の実情に合わせて市区町村が設定する。
・施設サービス※受給者数は96.3万人。
※介護老人福祉施設(特養)、介護老人保健施設、介護療養型医療施設などの施設に入所してサービスを受ける。
これらの数値は、年々増加傾向にあります。
月々約8.3万円の介護費用…在宅介護と施設介護の差は
介護保険サービスは、かかった費用の1割※を自己負担します。
※所得によって2割、3割の自己負担となるが、この記事では1割負担とする。
介護保険施設に入所して介護保険サービスを利用すると、費用の1割負担のほかに、居住費や食費、日常生活費などが別途必要となります。
また、居宅サービスでは要介護度別に利用できるサービスの支給限度額が定められ、限度額を超えてサービスを利用すると超えた分は全額自己負担となります。
(公財)生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査(速報版)」によると、介護保険サービスの自己負担分を含む介護に要した費用は次のようになっています。
・住宅改造や介護用ベッドの購入費などの一時的費用の合計:平均74万円
・月々の介護費用:平均8.3万円
・在宅介護:平均4.8万円、施設介護:平均12.2万円
・介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間):平均61.1カ月(5年1ヵ月)
・4年を超えて介護した人:約5割