コロナ禍で落ち込んでいた訪日外国人の数でしたが、今年上半期の訪日客は累計で1,777万7,200人に達し(※)、上半期の過去最高を記録。円安の追い風もあり急激に回復しています。訪日外国人の増加に伴い、注目されているのが「戸建て民泊旅館業投資」です。不動産仲介業、旅館業・ホテルの企画、運営などを行う「カールトン株式会社」(東京都荒川区)の位田祐希(いんでん・ゆうき)氏に、戸建て民泊旅館業投資の魅力や最新事情についてお話を伺いました。

「戸建て民泊旅館業投資」とは?

――そもそも「戸建て民泊旅館業投資」とはどのようなビジネスを指すのでしょうか?

 

「戸建て民泊旅館業投資」とは、戸建て物件にホテルや旅館業の許可を下ろし、大人数でくつろげるリビングが備わっている戸建て一軒家を貸し出すというものです。外国人観光客をターゲットにしており、オーナーは宿泊料収入を受け取ります。

 

都心のホテルは、大人数が宿泊できるような部屋は作りづらいので、 当社は成田空港、羽田空港、品川駅から乗り換えなくてもよい路線上で駅徒歩10分以内の戸建てを中心に企画しています。

 

――戸建て民泊旅館業投資に興味を持った方がオーナーとして契約するまでの具体的な流れはどのようになっているのでしょうか。

 

まずセミナーに参加していただき、個別面談で疑問点を解消、オーナー様の自己資金を確認し、問題がなければ業務委託契約書を締結し、コンサルティングフィーの着手金100万円(税別)をお支払いいただきます。

 

その後、私が作成した「実利回り10%以上」が見込める物件リストをご覧になってもらい、「土地から新築」「新築建売」「中古リノベーション」の3パターンから選んでいただきます。物件を購入したら、旅館業許可が取れるように、リフォームや消防設備を設置し、家具・家電を購入し、保健所検査や消防検査をして、旅館業としてオープンするというのが基本的な流れです。

「カールトン株式会社」代表・位田祐希氏
「カールトン株式会社」代表・位田祐希氏

オーナーは不動産投資家、経営者が8割

――初期投資や、スタートした後のランニングコストについて教えてください。

 

オーナー様が当社のプロジェクトに参画するためには、最低でも自己資金3,000万円が必要です。ランニングコストに関しては Airbnb様やBooking.com様など予約サイトの手数料が総売り上げの15%が引かれ、残りの金額が入金されます。当社では、オーナー様の口座に入金された金額の18%(税別)をいただいています。このほか、清掃費、消耗品費、水道光熱費、Wi-Fi代、固定資産税、税理士費用、銀行返済費用なども必要です。

 

――貴社で戸建て民泊旅館業投資を始められたオーナーは、どのような方が多いのでしょうか?

 

内訳は4割が不動産投資家、4割が事業を運営されている経営者で、残り2割が高年収のサラリーマンです。社会的地位の高い方、富裕層の方が多いですね。年齢層では40代が最多で、次いで30代、50代。20代の方も2人いらっしゃいます。

実利回り10%、平均80~90%の稼働率を実現

 ――通常の不動産投資と比較して、戸建て民泊旅館業投資にはどのようなメリットがあるのでしょうか?

 

民泊旅館業投資は、半分は不動産投資、半分は事業、という性格のもので、安定収入ではないですが、毎月ある程度の売り上げ見込みが立てられます。賃貸として物件を貸した場合はおそらく20万円程度しか売り上げが出ませんが、当社の物件は毎月180万円を売り上げており、新築でも実利回りが10%取れますので、投資の収支的には非常に高いと言えます。無人なので人件費もかかりません。

 

たとえば当社の四ツ木の物件の売り上げは月180万円で、損益分岐点は25万円です。1泊あたり6~7万円の宿泊料なので、月に5日間予約が埋まれば黒字になる計算です。コロナ禍という最悪なマーケットでも、海外の駐在員家族の2週間の隔離場所として1泊15,000円などで泊まっていただいていたので、ほぼトントンで赤字にはなりませんでした。コロナも明け、当社のオーナー様で損失や赤字のオーナー様は現時点でお一人もいらっしゃいません。

 

さらに言えば、家を建てるだけですから、万が一のときは実需向けの住宅ローンを活用して家を購入する方へ売却すれば大きなダメージはありません。稼働率は、オーナー様の物件で過去半年間の稼働率が80%を切ったことはありません。今は通年で平均80~90%以上の稼働率を保てています。

HOTEL Grand Star Tokyoの部屋の様子(カールトン社提供)
HOTEL Grand Star Tokyoの部屋の様子(カールトン社提供)

空港アクセスのよい好立地で企画

――立地について重要視しているポイントを教えてください。貴社の物件は、成田空港と羽田空港へのアクセスのよいエリアに集中しているのが特長ですね。

 

外国人観光客は飛行機で来日するので、成田空港と羽田空港を結んでいる都営浅草線、京成線沿いでいい立地を選定して企画しています。特に土地の値段が安く、企画しやすいエリアが押上駅、京成曳舟駅、八広駅、四ツ木駅、京成立石駅、青砥駅などですね。銀座や浅草、東京スカイツリーへ1本で行けるのが魅力です。

 

――同業他社やホテル、旅館との差別化のポイントを教えてください。

 

まず、物件はほぼ新築で、新品の家具を入れています。中古であれば、フルリフォームをかけます。ゲストとのメッセージ対応や清掃スタッフのクオリティの高さも当社の特長ですね。

 

また、子どもがたくさんいるご家庭の場合は祖父や祖母、お手伝いさんなども一緒に連れてくるケースが多いのですが、一般的なホテルの場合、最も多く入れるスイートルームでもせいぜい4人が限界なので何部屋も取らざるを得ません。そうすると夜の家族団らんや朝食をみんなで食べるという当たり前のことができませんが、 当社は最低10名、最大25名収容できる物件を企画することで、家族団らんで過ごせることが特徴です。

 

――今後の予定、構想を教えてください。

 

事業の方向性として、葛飾区、墨田区を中心に東京都内に50物件を展開すると決めているので、綺麗な物件を作るだけではなく、「体験価値」を提供したいと思っています。着物を着て浅草寺やスカイツリーを回って写真を撮ってあげるツアーを作ったり、手巻き寿司パーティーを提供したり、「日本文化を体験できる価値」「ゲストが、ゲスト同士や日本人と交流できる価値」を提供できると面白いのではと考えています。

 

また、私達が現在6歳2歳0歳の子育てをして日々奮闘しておりますが、子連れ家族が過ごしやすい旅館業物件の提供を重視しております。まずは、観光客がしっかりと認知できる弊社のブランドを作り、「大人数の家族で、日本を最大限楽しむ」を実現したいです。

※「日本政府観光局」https://www.jnto.go.jp/news/press/20240719_monthly.html

※本インタビューは、2024年8月に収録したものです。
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