うまく雑談できるようになりたいですよね。一般社団法人日本聴き方協会代表理事の松橋良紀氏は、著書『うまく「雑談できる人」と「できない人」の習慣』の中で雑談できる人とできない人の違いを取り上げています。それは一体どんなものでしょうか?本書から詳しく紹介します。
うまく雑談できる人は一期一会を気にせず、できない人は一期一会を大事にする。
名刺を交換すると、「一期一会に感謝」と書いている方に出会うことがあります。著者では、本のサインに「一期一会」と書く方もいます。一期一会を辞書で調べると、もともとは、千利休の弟子、宗二の『山上宗二記』に書かれていた言葉です。『どの茶会でも一生に一度のものと心得て、誠意を尽くすべきこと』という言葉から、一生涯に一度会うかどうかわからない出会いを大切にすることのたとえとして使われています。
飛行機で隣同士になった方と仲良くなり、その後もビジネスでつながり、一生涯にわたっての大親友になった。こんなエピソードを聞いたりすると、「コミュニケーションの達人なんだな。私には絶対無理!」と思ったりします。
私も独立してからしばらくは、人脈を広げようと思い、さまざまな交流会や飲み会に出かけていました。会場で出会った人との縁を深めて、その場でビジネスにつなげようと努力をしていました。一期一会を大事にしようと思っていたわけです。それは「仕事のチャンスを広げよう」「事業を拡大しよう」というエネルギーが原動力でした。
ですが、今はほとんどやっていません。「一期一会でなんとか人脈を作ろう」というのは、私には向いていないと思ったからです。あなたが今、親しく付き合っている人の顔を思い浮かべてください。次に、それぞれの友人との出会った瞬間や、仲良くなったきっかけを思い出してみてください。
一度会っただけで、すぐに打ち解けて仲良くなりましたか? だとしたら、この本が不要なくらいの雑談の達人です。私の場合だと、今も長く付き合っている人で、初対面から一度で仲良くなった人は一人もいません。一期一会をきっかけに友人になった人はいません。何度か会ううちに、ビジネスを一緒にやるようになったり、一緒に旅行を行く仲になった人だけです。
ですから、松橋流雑談の心得は「一期一会に期待するな」です。一期一会で人脈作りをしようという人は、どちらかというと友人や仲間づくりではなく、見込み客獲得のモチベーションが強いと思います。ですが、事務職や特に個人対象の営業が必要じゃない仕事の人が、「自分は初対面から仲良くなるのは苦手なんです」というのは当然のことです。なにしろ、リスクを冒してまで、人脈づくりをするだけの理由がないからです。
あなたが営業職ではなく、人脈づくりをする必要がないのなら、「自分もあんなふうに、初対面でも臆することなく会話ができたらいいな」と、営業職の人と比べるのはナンセンスです。そう思うのは、比較する相手を間違えていると言えます。あなたがもし、「この人は素敵な人だな。知り合いでつながりたいな」と思うなら、その場でなんとかしようというよりも、単純接触効果を活用しましょう。
もともとは興味がない人に対して、接触回数を重ねるうちに興味を持ち、好きになっていく心理的現象です。心理学者であるロバート・ザイオンス氏に提唱され、「ザイオンス効果」とも呼ばれています。素敵だと思ったら、その日のうちにあいさつとお礼を兼ねたメッセージを送ります。そして、翌日以降にまた連絡をします。
「あなたが次回も参加するなら私も参加したい」など、好意を伝えていくとさらにいいでしょう。ポイントは、長文にしてメールを一括で送るよりも、小分けにして送ることで接触回数を増やすというところです。
回数を重ねて仲良くなっていくほうが、より親密な関係を築きやすいのです。
【ポイント】
一度で相手をどうにかしようとせず、回数を重ねて仲良くなろう!