うまく雑談できる人は 質問をし、できない人は 「さっそくですが」と言う。

ピンポーン。「はじめまして。10時のお約束で参りました、○○会社の松橋と申します」「はーい、今あけます」個人宅に訪問する営業になって3年目。インターホンを押すとお客様がドアを開き、玄関に入ったら名刺を差し出しながら自己紹介。「今回はお約束をいただきありがとうございます。○○会社の松橋と申します。よろしくお願いします」


ここから廊下を通り、居間へ案内されますが、その間は無言です。居間に通されたら、大きなバッグの中から資料を取り出し、テーブルに広げます。「ではさっそくですが、我が社のご案内をさせていただきます」そこからはひたすら営業トークを1時間ほど繰り広げます。そしてほとんどは契約には至らず、帰り道で「営業の仕事は自分に向かないよな」


はい、今思えば、雑談を一言もせず、売り込みだけ懸命にしている人が売れるはずもありませんでした。そんなとき、友人から「心理療法の講座を受けるんだけど、修了したらカウンセラーになれるんだって。一緒に行かない?」どうやら日本に入ってきたばかりのNLPという心理学を使った心理療法のようです。「今の仕事には希望が持てないし、カウンセラーの資格が手に入るなら、それもいいかも」と思い切って通うことにしました。


講座では、心理の先生が、クライアントと初めて面談をするときの見本を見せてくれたのですが、それには驚きました。たいした自己紹介もせず、すぐに雑談に入るのです。私は毎日、雑談もせずに会社や自分の紹介を5分くらいはやっているのに。しかもその雑談は、すべて質問形式でした。


「今日は暑いですね〜。エアコンの温度はいかがですか?」「この場所、すぐにわかりましたか?」「ちょっと駅から遠いので迷いませんでしたか?」などなどいろいろと質問をして、自分はたいしてしゃべらず、ほとんどはクライアント役がしゃべります。


数分間の雑談のあとに「今日はどんなことをすっきりさせたいですか?」と本題に入りました。カウンセラーの先生は、充分な雑談をしてリラックスしてもらってから本題に入っていました。しかも、自分の名前を名乗ったあとは、ずっと質問です。カウンセラーの先生が話す時間は1割もなく、クライアントが9割以上話しています。


質問をしてしゃべらせる。それに対して大きめにうなずく。オウム返しや驚きのリアクションをする。それをみて、クライアント役はまた何か話したくなる。このようなやりとりをしながら、信頼関係を築いていました。衝撃でした!


自分の話を一切しないのです。私はといえば、雑談もせず、自己紹介と会社紹介あたりから、ひたすら弾丸トークでしたから。自分のアピールをすることで信頼関係を築くものだと思っていた私には、驚きの光景でした。そして雑談がいかに大事かを知った日でもありました。


【ポイント】


コミュニケーションの達人ほど雑談を重要視する!