2005年以降、増加傾向にある非正規雇用者。日本では現在、雇用者の約4割が非正規雇用であるといいます。なかには、震災などの影響でやむを得ずに非正規雇用の道を選ばざるを得なくなった人もいるようです。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、派遣社員から契約社員に“出世した”と語る、35歳男性のインタビューをみていきましょう。
惨めなものですね…最近の大きな出費は1万3,000円の寝具。月収24万円の35歳契約社員が「こんなことはやっちゃ駄目」と語る〈派遣工〉の実態【ノンフィクション】
失敗したと思います…直樹さんが語る「派遣から抜け出せない」ワケ
派遣会社の担当者に次はどこへ行くんだと尋ねたら「紹介できる仕事はない」という態度。「あんた、もう10年だろ。そろそろ辞めてくれないか」ということでクビ切りされたという次第だ。
「工場派遣の最後は使い捨てですからね。やらない方がいいし、やったとしても早く足を洗って次を考えないと。損をするのは自分なんだから。それは俺も頭では分かっていたんですが流されてしまった。失敗したと思います」
どうしてかというと派遣会社が上手く弱みを突いてくるから。
「失業しているとかフリーターやってますとかじゃ、部屋を借りるのもひと苦労なんです。工場派遣なら仕事と住まいがセットになっているから、採用されれば収入と住まいが確保できる。そうなると派遣の仕事は魅力です、何も持たずに寮に入れますから。交通費や生活応援資金を出してくれる派遣会社もありますしね」
布団をはじめとしてカーテン、家電品、ロッカーなどの家財道具は揃っているから体ひとつで入居できる手軽さがある。派遣先が変わって転居する場合も身の回りのものだけ持って移動できるからお手軽だ。
「きちんと部屋を借りて就職活動をすればいいんですが、一度派遣会社の寮に入ってしまうとなかなか出られない。部屋を借りて生活必需品を揃えることを考えると、やはり寮付きの派遣労働を選んでしまう。その結果がこれですよ」
直近に働いていた工場では、派遣は40歳未満が内々の決まりらしく、38歳ぐらいになると契約期間が終了したところでカットされていた。
「それを見ていたので次は俺が危ないと感じていました。なので職探しを始めたのですが上手くいきませんで……。面接できても話しぶりから地元の人で32、3歳ぐらいまでという感じでした」
ハローワークにも何回か通ったが、1時間以上も待たされた挙句、年齢のことをつべこべ言われる。
「一度寮付き派遣をやったら負のスパイラルに陥るってことです」
警備の仕事は求人情報誌で見つけたもの。公休日を使って2度面接を受け、どうにか採用してもらえたということだ。