2005年以降、増加傾向にある非正規雇用者。日本では現在、雇用者の約4割が非正規雇用であるといいます。なかには、震災などの影響でやむを得ずに非正規雇用の道を選ばざるを得なくなった人もいるようです。ルポライター増田明利氏の著書『お金がありません 17人のリアル貧困生活』(彩図社)より、派遣社員から契約社員に“出世した”と語る、35歳男性のインタビューをみていきましょう。
惨めなものですね…最近の大きな出費は1万3,000円の寝具。月収24万円の35歳契約社員が「こんなことはやっちゃ駄目」と語る〈派遣工〉の実態【ノンフィクション】
これはどういうことだ?…派遣先の「現実」に唖然
失業手当はもう終わり、貯金もそう多くはない。そんなときに目にした派遣会社の募集案内は破格の条件で魅力的だった。
「月収30万円以上可、直接雇用への転換あり。地元のハローワークじゃめったにない好条件だと思いました」
派遣会社の説明会に参加し、そこで紹介されたのが愛知県の自動車部品会社。
「有名な自動車メーカーの系列会社で未経験可、寮完備、月収32万円となっていて。ここで生活を安定させようと思っていたので即決でした。1週間後には愛知県の工場で働き始めました」
ところが時間を置かずに「これはどういうことだ?」「言ってたことと違うじゃないか」という不信感が芽生えた。
「まず仕事がきつい。簡単な作業と機械操作と言われていたけど、単純動作を繰り返す流れ作業。正直、まったくつまらないものです」
毎日、機械の一部のように同じ作業を続けるだけ。前も作業職だったが多少は考えるし相談もする。ところが誰かと話すことはないし工夫したりすることも要求されない。まるでロボットだと思った。
「収入についても、実際それほど良くはなかったです。基本的に時給制で1,200円。30万円稼ぐには時間外60時間、休日出勤を2回やらないといけない。毎月240時間も働くのはしんどかった」
残業をせず土日・祝日は完全休養でやったら20万円にもならない。それどころかわがまま、生意気と言われ雇い止めされる危険もある。
「最高で月収34万円、手取りで29万円という月もあったけど労働時間は270時間ぐらいあった。もう自分の時間なんてほとんどなく、帰ったら寝るだけでした。今日は何日で何曜日だとかも分からなくなりましたね」
派遣は年齢に関係なく時給は一緒。21、2歳で月収30万円なら高いが30歳ぐらいなら普通。50歳だったら少ない方。こういうことも分かっていなかったのが良くなかった。
直接雇用云々についても、よほど運が良ければ有期の期間工になれるというもの。正規雇用は絶対になかった。