和食が世界で本格的なブームになっています。海外で人気になっている和食を細かく見ていくと、寿司や天ぷらはもちろんのこと、おにぎり、ラーメン、カレーライス、牛丼など、日本で定番人気の料理が続々進出していることに驚かされます。しかしながら和食の海外進出において問題になるのが、製造ノウハウや職人の人手不足。寿司や日本蕎麦など熟練の技を必要とする料理となれば、誰でも気軽に開業・運営できるわけではありません。 ところがそのような問題を解決し、従来よりも気軽にスタートアップできる環境を後押ししてくれるのが、食品製造機器の技術進化なのです。そこで今回は、今年6月に日本で開催された「FOOMAJAPAN2024(※)」で国内外から多くの注目を集めていた食品製造機器を厳選し、注目される最新技術の詳細をわかりやすくご案内していきたいと思います。 ※FOOMAJAPANとは? 世界最大級の食品製造に関する総合展示会。食品製造に関する最新技術やソリューションが一同にそろい、2024年は国内外から11万人以上の来場者が集まった。
世界で和食ブームを生み出すカギはロボット!食品製造機器の最前線

和菓子から洋菓子や調理食品まで…さまざまな成形作業を可能にする「包あん機」

1時間で3,600個の豆大福の成型が可能になっている。(レオン自動機提供)
1時間で3,600個の豆大福の成型が可能になっている。(レオン自動機提供)

最後は、大福やまんじゅうを成形できる「包あん機」のご紹介です。世界で初めてまんじゅうやクロワッサンの自動成形機やシステムを開発したのがレオン自動機(本社:栃木県宇都宮市)。社名にある「レオン」は、物質のもつ「粘性」や「弾性」といった性質を基にその物質の流動を解明する流動学(レオロジー)に由来。このレオロジーを礎とする応用工学から「粘性」と「弾性」の条件を巧みに利用して、食品のデリケートな味や食感を損なわず成形する自動化システムを開発、製造しています。

「火星人 CN700」(レオン自動機提供)
「火星人 CN700」(レオン自動機提供)

今回ご紹介する「火星人CN700」は、一台で和菓子のみならず洋菓子やコロッケなどの調理食品まで様々なメニューが作れる万能型包あん機。手作りのような本格和菓子を1時間で最大5100個作ることができます。高性能の秘密は大きく2つ。サイクロイド式生地送り機構によって生地の流量が安定させて、豆大福やチョコチップクッキーなど粒上素材をスムーズに送り出すことが可能に。また2段コンベヤー仕様により、小さな形状の和菓子を高速かつ均一に生産することができます。さらに別のオプションを搭載することでクリームやジャム等の柔らかい素材や、栗やフルーツなどの固形物もつつむ事ができるため、洋素材を組み合わせたネオ和菓子の製造もできるようになると言います。国内のご当地食材を使ったその土地ならではの和菓子を製造することができ、お菓子や総菜の概念にも楽しい進化が期待されます。

食品を生み出す製造機器の技術は食文化の多様化やグローバル化にともなって、可能性は無限大に広がりつつあります。和食が世界中いろいろなシーンで花開く時代もそう遠くはありません。


<著者>
スギアカツキ
食文化研究家。長寿美容食研究家。東京大学農学部卒業後、同大学院医学系研究科に進学。基礎医学、栄養学、発酵学、微生物学などを幅広く学ぶ。在院中に方針転換、研究の世界から飛び出し、独自で長寿食・健康食の研究を始める。食に関する企業へのコンサルティングの他、TV、ラジオ、雑誌、ウェブなどで活躍中。