毎年、家族で実家に帰省し、親戚一同で集まるお盆。そもそもお盆とは、亡くなった方が現世に戻ってくる期間であることは広く知られていますが、その由来やなぜお盆の時期に盆踊りや花火大会が行われるのかについては知らない方も多いのではないでしょうか? 本記事では、山陰地方で呉服店を経営、和と着物の専門家である池田訓之氏がお盆について解説します。
なぜ夏の定番イベントには浴衣を着るのか?
浴衣の歴史はトリビア
盆踊りはこのように、少なくとも大正時代から続く文化です、そのころの衣といえば浴衣。盆踊りの振り付けは浴衣が基本なので、浴衣で参加すれば、踊り姿が映えることでしょう。
この浴衣で出歩くようになったのは江戸時代からです。それまでは浴衣で外を歩くなんてことは考えられなかったのです、浴衣はその字のごとく浴室で着る衣でした。
平安時代ごろから日本人は風呂に入り出したのですが、水道網が発達していなかったので大量の水を集めることが難しく、当時は蒸し風呂でした。蒸し風呂内でやけどをしないようにと着たのが浴衣だったのです。
江戸時代の後半から明治にわたり現在のように貯める風呂が普及してくると、浴衣は入浴後に着るバスローブのような位置づけに変わっていきます。銭湯への行き帰りの衣として浴衣は用いられるようになったのです。
藍染浴衣で盆踊りや花火大会へ
江戸時代には、木綿の栽培が発達しました。安価で染付きのよい木綿地に、藍染めで柄付けをすれば鮮やか。
また、藍染は虫が寄ってこない、現代のアトピーのようにお肌がデリケートな方にも肌に優しい、武士は血止めにしていたというように抗菌作用もある、防臭効果もありということで、素肌の上に羽織る夕涼み着には最適ということで藍染浴衣が大流行します。
日本の藍染の原料は一年草で染料づくりに手間がかかるのですが、青が他国の藍染と比べて特に鮮やかだといわれています。ジャパンブルーと呼ばれる所以です。
こうして、湯涼みがてら、藍染の浴衣で花火や盆踊りに出かけるという、日本の典型的なお盆のスタイルができあがり、いまに至っているのです。
池田 訓之
株式会社和想 代表取締役社長
(※本稿はあくまでも一例で、地域や宗派により内容は異なることがあります。)