日本のほとんどの家庭にあるといわれている「家紋」。戦国時代の武将をイメージする方が多いと思いますが、現代でも紋付袴に家紋を入れるなど、日本ならではの文化として残っています。そもそも家紋とはいつごろなんのために生まれ、どんな意味が込められているのでしょうか? 山陰地方で呉服店を経営、和と着物の専門家である池田訓之氏が、意外と知らない「家紋」について解説します。
平安時代から続く…家紋の由来
家紋とは家のシンボルです。家紋をどの家も備えているのはおそらく日本だけで、家紋は日本が世界に誇れる文化のひとつなのです。
家紋の起こりは、平安時代。宮中に公家が通う牛車に誰が乗っているのかを判別するために、目印としてつけだしたのが始まりと言われています。
時代は移り、公家から武士が世の実権を握るようになっていきますと、武士も公家にならい家紋をつけだします。戦の折などに、敵味方の判別をつけるのに便利ということで武士階級に広まりました。天下泰平の江戸時代、士農工商という身分制度の支配者であった武士はほかの階級に、苗字を名乗ることは禁じましたが、家紋をつけることは積極的には禁じませんでした。そこで庶民のなかでも家紋をつける者もでてきました。たとえば、歌舞伎役者の衣装には大きな家紋が入っていますね。
誰もが家紋をつけるようになった決定打は、明治6年の苗字必称令だといわれています。時代は明治になるも、民を明治政府はうまく治めきれない。そこで、明治政府は国民の戸籍を整理する前提として、苗字を皆が備えるように命令したわけです。この命令により、家という単位への意識が高まり、家の紋をみんなが備えるようになったのでした。