自営業・フリーランスにとって、老後の資金準備は死活問題です。居酒屋を営んでいる50歳のAさんも、年金はあてにできないと「生涯現役」を宣言していました。しかし、常連客から「老後の年金を増やす方法がある」と耳にしたAさんは、FPのもとに相談へ行くことに……。Aさんの事例をもとに、月々「たった400円」でできる年金の増やし方をみていきましょう。FP Office株式会社の茂野博起FPが解説します。
年金なんてあてにならん!50歳居酒屋店主、客の前で高らかに“生涯現役宣言”も…常連客「月々400円で国民年金の受取額を増やせるよ」→驚きの増加額に歓喜【CFPの助言】
iDeCo利用者は要注意!「付加年金」のデメリット
このように、手軽さや制度設計の明瞭さなどが魅力の付加年金ですが、メリットばかりではなく、デメリットや注意点にも目を向ける必要があります。
1.iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用上限枠を縮減させてしまう
第1号被保険者の場合、iDeCo(個人型確定拠出年金)の利用上限額は、月額6万8,000円となっています。
しかし、もし付加年金に加入した場合、iDeCoの利用上限額から付加年金保険料の400円が差し引かれ、6万7,600円がiDeCoの掛金上限枠となります。
iDeCoの利用を考えている人や、すでに利用している人は注意が必要です。
2.加入2年以内に死亡した場合は損をする
もしも付加年金に加入してから2年以内に亡くなった場合は、拠出した掛金を回収しきれません。
3.年金の「繰上げ受給」を選択した場合、付加年金受給額も減少する
年金の「繰上げ受給」は、本来老齢年金の受給開始年齢である65歳より前に、最大5年間繰り上げて(=前倒しして)年金を受け取ることができる制度です。繰上げ受給の場合、老齢年金と付加年金はその分減額されることとなります。
年金の繰上げ受給を視野に入れている場合は、この点も踏まえて慎重にプランを立てていく必要があるでしょう。
4.加入時や停止時は、その都度手続きが必要
付加年金に加入したい場合や反対に停止したい場合には、その都度手続きが必要です。
加入時は「国民年金付加保険料納付申出書」を、停止時は「国民年金付加保険料納付辞退申出書」を、市区町村役場またはお近くの年金事務所に提出する必要があります。
5.国民年金基金との併用はできない
国民年金基金と付加年金の併用加入はできません。
付加年金への加入を決めたAさん、隠居も視野に
FPから一連の説明を受けたAさんは、「月々たった400円でこんなに増えるのか。入らないのはもったいないな」と付加年金への加入を決断しました。
また、繰下げ受給も前向きに検討するそうです。「もともと体がもつまで店をやるつもりだったけど、これがあればもしかしたら、店を閉めてゆっくりしてもいいかもな」と嬉しそうに話していました。
このように、「付加年金」は自営業者やフリーランスのような第1号被保険者にとって確実な公的年金の上乗せが叶う制度です。
一方、デメリットも存在するため、付加年金の特徴を知ったうえで、iDeCoなどの諸制度と付加年金の併用を模索するなど、あらかじめ綿密なプランを立てて老後の資金準備の最適解を見つけていきましょう。
これを機に、将来の年金生活についてじっくりと考えてみてはいかがでしょうか。
茂野 博起
FP Office株式会社
日本FP協会認定CFP®