健康な腎臓を保つためには一体どんな食生活がいいのでしょうか。医師の別府浩毅氏は著書『透析専門医が教える! 健康長寿の人が毎日やっている腎臓にいいこと』の中で、「蛋白質不足分になったときは脂質と炭水化物を増やすしかない」と言っています。一体どういうことでしょうか? その理由を本書から紹介します。
腎機能が低下したら、カリウムやリンを含んだ食事を減らそう
・茹でることでカリウムを除去し、リンも軽減できる
腎臓は体内の電解質を調整する働きをしていますが、腎機能が悪くなると調整がうまくいかず、老廃物が溜まってしまいます。溜まらないようにするには、老廃物になるものをなるべく口にしないようにすることです。茹でることで、老廃物となる部分をカットすることができます。
腎機能の悪い人は、食事のメニューを選ぶときに気をつけることで、身体にかかる負担を軽減させましょう。カリウムもリンも電解質であり、腎機能の悪い人には要注意な2大ミネラルです。ただ、どちらも身体に必要なものなので、身体に負担とならない食べ方をぜひ知っておきましょう。
・カリウムを腎臓から排泄できなくなる高カリウム血症に注意
カリウムは人体に必要なミネラルの一つであり、筋肉の収縮を調整したり、ナトリウムの排泄を促進することで血圧の上昇を抑制したりしています。その分、体内の適正な量から外れると、問題が起こります。カリウムの高い状態を高カリウム血症、低い状態を低カリウム血症と言いますが、問題になるのは腎機能低下にともない、カリウムを腎臓から排泄できなくなる高カリウム血症です。
高カリウム血症になると、筋収縮の調節ができなくなる結果、筋の脱力感が起こり、重篤な場合は心停止を起こすこともあります。そのため、医療関係者は採血でかならず腎機能とカリウムをセットで評価し、データの確認を怠らないようにしています。腎機能が消失したときに、人工透析を2日に1回行う最大の理由は、カリウムが高くなると心臓が止まってしまうことがあるからなのです。
・カリウムを多く含む食品は、基本的に生で食べない
カリウムを多く含む食品は、いも類、海草、きのこ、野菜の青菜類があげられます。一般的には身体にいい食品であっても、自分の身体の状態によってはあまりよくない食材があることをぜひ知っておきましょう。これらの食品は、茹でることでカリウムがかなり軽減されます。
【カリウム制限のポイント】
(1)低蛋白食にする
食品中の蛋白質量とカリウム量は正比例の相関関係です。そのため、蛋白質を多く摂れば、カリウムもたくさん摂ることになり、摂取量も多くなります。蛋白質制限は、カリウム制限をすることとイコールの関係です。
(2)カリウムを多く含む食品を知る
いも類、海草、きのこ、野菜のなかの青菜類には、カリウムが多く含まれていることを知っておきましょう。
(3)カリウムを多く含む野菜の食べ方
野菜は生で食べる際、30分以上水にさらしましょう。先に切って断面を多くして、水に触れる面を増やし、カリウムを抜けやすくします。また加熱して食べる野菜は、一度湯通しすることで、カリウム量を3~5割減らすことができます。
(4)カリウムを多く含む果物の食べ方
果物は生を避けましょう。果物を食べるのであれば、シロップに浸かっていることでカリウムが抜けていくので、缶詰のほうがおすすめです。もちろん、シロップは飲まないようにしましょう。
・高リン血症にならないためには、蛋白質制限が大切
リンも、カルシウムやマグネシウムとともに骨や歯をつくる成分になったり、体内のエネルギーをつくり出すときに必須の役割をしていたりする、人体に必要なミネラルの一つです。魚類、牛乳・乳製品、肉類といった動物性食品や大豆に多く含まれます。リンの高い状態を高リン血症、低い状態を低リン血症と言いますが、問題になるのは、腎機能が低下したことで、リンを腎臓から排泄できなくなる高リン血症です。
リンが高いとカルシウムと結合し、本来は起こり得ないような場所で血管が石灰化して、動脈硬化が進行する原因になります。慢性腎臓病(CKD)の人が動脈硬化を起こしやすい理由の一つは、リンを上手に排泄できないからです。リンは蛋白質の多い食品に多く含まれているため、蛋白質制限さえしっかり行っていれば、自然とリンの制限にもつながっていきます。
つまり、低蛋白食=低リン食なのです。高リン食品として、次の4つのものを押さえておきましょう。
1 カルシウムが多い食品(乳製品、骨ごと食べられる魚)
2 卵製品
3 肉類、魚介類
4 豆類、納豆
なお、食品添加物として使用されているリンについては、次の項でお話しします。