「健康のためにプロテイン」は自殺行為!?

・蛋白質は食事からで十分

サプリメントとしてプロテインを摂っている人は多いとは思いますが、わたしは身体を守るためにはよくないのではないか、と疑問を抱いています。なぜなら、プロテインにはリンがかなり含まれているため、動脈硬化が進んでしまい、腎臓に負荷をかけるものだからです。


たしかに、蛋白質は筋肉や骨の構成成分であり、エネルギー源になったり、酸素や栄養素の運搬を行ったりもする、生命を維持するために不可欠な物質です。摂取目標量が設定されているのはそのためです。でも、蛋白質は基本的に、食事から摂るべきである、とわたしは考えています。ダイエットブームもあり、「健康にいい」という理由で、プロテインのサプリメントを摂取する人が増えました。


ただ、国が定める1日の推奨摂取量は50~60gであり、卵や乳製品、肉、魚を普通に食べていれば摂取できる量です。わざわざプロテインで補充する必要はありません。また、商品として売られているプロテインは、飲みやすくするために人工甘味料が加えられています。油脂や増粘剤、乳化剤といった添加物も多いので、わざわざプロテインで余分なものも同時に摂取しなくていいのではないかと思うのです。


安価なサプリメントのなかには、石油で固めているものもあり、素材自体がよくないと言われることもあります。種類にもよりますが、人工甘味料の摂取は腎臓に負担がかかります。また、添加物の一種である人工甘味料には、発がん性化も指摘されていて、海外では規制がかかっているものもあるほどです。わたしも、人工的につくられたものはあまり摂らないようにしています。

・蛋白質の過剰摂取は腎臓の過剰ろ過を導き、腎機能を低下させる

最近では、高齢者に筋肉をつけさせようと、フィットネスクラブがサプリメントのプロテインをすすめることが多くなりました。わたしの医院に来る患者さんのなかにも、「フィットネスクラブですすめられた」と言う人が少なくありません。実際には、摂取後に腎機能が悪くなっている人もいます。年齢とともに腎機能は低下しますが、高齢の人がフィットネスクラブで言われた通りにプロテインを摂取すると、もともと悪い腎機能がますます悪化してしまうのです。


腎機能が低下している高齢者は、プロテインの摂取で腎機能が悪くなる可能性があることに留意すべきです。ですから、わたしはプロテインを摂るよりも、規則正しい食事をおすすめしています。きちんとした食事には、蛋白質だけでなく食物繊維やミネラルも含まれているので、人工的につくられたサプリメントでは補えない部分もカバーすることができます。


ただ、高齢になると蛋白質の必要量は増加するため、食事による摂取では追いつかないような場合は、腎機能を正しくフォローしながら、サプリメントで補充していくことも必要でしょう。

・自分の病状を正しく理解し、正しい蛋白質摂取量を計測しよう

何度もお話ししている通り、腎機能が悪い人は、老廃物や不要な物質を尿として排泄する機能が落ちています。蛋白質を摂りすぎると、「尿毒素」と呼ばれる有害物質が身体に蓄積され、倦怠感を引き起こすため、蛋白質の摂取量を制限する必要があるのです。ダイエットのための糖質制限が流行っていますが、これも蛋白質の摂取が増える要因になっています。


とくに、糖尿病歴が長く、腎機能が低下している人は、腎臓への負担が大きくなるため、蛋白質の摂りすぎはご法度です。短期的に血糖値が下がったとしても、腎機能が悪化してしまえば元も子もありませんよね。

・ごく一部の例外を除き、サプリのプロテイン摂取はとくに必要ない

サプリメントのプロテインは、高齢の人だけではなく、若い人も摂らないほうがいいとわたしは思っています。医師によっては摂っても大丈夫、と言う人もいますが、わたしはこれを摂る意味をあまり見出せていません。もちろん、例外はあります。それは、体質的にお肉を消化できない人です。


胃酸や脂肪を分解してくれる「消化酵素」というものがあるのですが、消化酵素は蛋白質でできているため、土台となる蛋白質がなければ消化することができません。たとえば、蛋白質を摂るように言われ、お肉を食べたとします。でも、消化酵素そのものがない人は、少量のお肉も消化できないので、お腹が痛くなることもあるのです。この症状は、若い女性や痩せている人に起こりがちです。


このような症状が出てしまう人に、治療の一環としてプロテインやアミノ酸をあえて摂取してもらい、身体を一定の蛋白質で満たすことがあります。ほかにも、治療の一環としてプロテインを摂取してもらうケースもなくはありません。ただ、これを実施するのはごく少数派であり、普通の人であれば、あえてサプリメントのプロテインを摂る必要はないでしょう。