おとなしい人はリーダーシップをとるのが得意じゃないイメージがありますよね。脳科学者の西剛志氏は著書『「おとなしい人」の完全成功マニュアル 内向型の強みを活かして人生を切り拓く方法』の中で、「リーダーシップは従業員によって決まる」と言っています。一体どういうことでしょうか? それはなぜなのか、本書から紹介します。
静かなリーダーが直面する壁
孤独に強く、部下に考えさせるのがうまい内向型リーダーですが、外向型リーダーが多い中で、もちろんストレスを感じる場面もあります。フロリダ・アトランティック大学でリーダーシップを研究するローズ・O・シャーマン教授は、内向的な人がリーダーになったときのエピソードをこう伝えています。
あるスタッフが、組織のマネージャー職に昇進しました。最初は不安でしたが、新しい環境に慣れてくると楽しく、メンバーと一緒に働けることに喜びを感じていました。しかし、ある日突然、上司に呼び出され、こんな言葉を伝えられたのです。
「君は社会性が十分じゃない。毎日カフェに行って、チームメンバーとランチをとるように」この言葉を聞いて、そのマネージャーはかなりショックを受けたそうです。なぜなら、自分は一人で食事をするのが大好きで、仕事の合間に唯一リラックスできる大切な時間だったからです。物静かで、一人を好む、そんな自分が本当にリーダーに向いているのか、改めて考えさせられたという話です。
内向的な人は、外向的な人が思い描く理想の世界で生きているため、周りと比較すると自分には仕事が向いていないと感じてしまうことがあります。しかし、内向性がある人は、決してリーダーに向いていない訳ではありません。内向的な人は深く考え、具体的に話す。そして、外向的な人より相手の話を聞き、浅い部分ではなく深い部分に目を向けます。中心にいることには関心がなく、穏やかさを通して人にリラックスを与えることができます。
米国の研究でも、内向性があるリーダーは会社のプロジェクトが計画段階にあるときに力を発揮するという報告もあります。全体を広く俯瞰して方向性を深く考える能力が高いと言えるでしょう。あまり表には出ようとはしませんが、内向型の人は孤独感に強く、リスクやマネージングの問題に対してより創造的で注意深い一面があるため、後方で支援するようなスタイルだと内向性を生かせて、より成功しやすくなるのです。
地球上には太古の昔から「長老」という形のリーダーが存在しました。落ち着きがあり全体を俯瞰して言葉をかけ、人を動かすその姿はまさに内向型がとるべきリーダーシップの姿なのかもしれません。
西剛志
脳科学者