老後はどんな会話をするといいのでしょうか? 精神科医の保坂隆氏は、による著書『精神科医が教える ずぼら老後の知恵袋』の中で「プチずぼら」を推奨しています。一体それはどんなことをすればいいのでしょうか? 具体的な方法を本書から紹介します。
「できません」とサラリとかわす
「田中さんは何をやっても器用で、ささっとこなすでしょ。この前も町内会の議事録をお願いしたら、翌日には出来上がって驚いたわよ」「そうそう、本当に頼りになるわよね。だから今年は盆踊りのお知らせも田中さんに頼もうと思うの。いいわよね?」「田中さんなら優しいから、嫌とは言わないわ。大丈夫よ」
このように人から頼りにされるのは決して悪いことではありませんし、その人の社会的信用を物語ってもいます。ただ、よくないのは他人の期待に応えようと必要以上の責任を背負い込むことです。誰でも「いい人」と思われたら嬉しくなりますし、誰かの役に立てたら「よかった」と喜びを感じるものです。
しかし、誰にでも愛されて、誰からも「いい人」と呼ばれて喜ぶのは自己満足。ちょっと意地悪な言い方をすれば、「八方美人」になってしまいます。それでも対外的な評価や周囲とのコミュニケーションが自分にとって大事な意味を持つ場合は、八方美人でも十方美人にでもなって社交性を発揮してください。ただし、現役を退いて第一線でがんばる必要がなくなったら、八方美人はもう卒業しましょう。
特にいけないのは、「自分さえ無理をすればすむから」とか「自分一人でがんばればなんとかなる」という考え方。何でも自分で抱え込んで、犠牲的精神を発揮するのは日本人の悪い癖ですが、そんな無理が効くのも、せいぜい還暦までです。
60歳を過ぎたら他人の評価は一切気にせず、自分に正直に、やりたいことには「イエス」、やりたくないことには「ノー」と言うようにしましょう。親から「人のことが第一で、自分のことは二の次でいい」と教えられてきたような人は、「人の頼みを断るなんて、悪くてできない」と考えがちですが、60歳を過ぎたら生まれ変わったつもりで、舵を切り直してみませんか。
保坂隆
保坂サイコオンコロジー・クリニック院長