現代は「タイパ」という言葉の台頭が表す通り、無駄をどれだけ省けるか? を重視する傾向があるように思います。ですが「人間関係」においては「ともに無駄な時間を多く過ごすことで、絆の強さや永続性が高まる」と明治大学文学部教授の齋藤孝氏は説きます。本記事では癒されて、元気になる――心地よい「人間関係」を構築するコツに迫ります。
「タイパ」重視の〈現代人〉が見落としている「無駄な時間」が、何十年ともたらす<永続的なメリット>とは【明治大学文学部教授・齋藤孝が解説】
1960年代以降、家族内でも距離を取ることが可能に
1930年代や戦後日本がまだ貧しい時代は、子ども部屋などありませんでした。子ども部屋にドアがつけられたのは、60〜70年代で、子どもの、家族内の独立宣言でもありました。家族内でも距離を取ることが、家の構造から可能になりました。成長期の子どもにとっては、大切な変化です。家族の空間はリビング中心と、関係性が変わってゆきました。
2020年代現在、夫婦のカタチもさまざまに
2020年代の現在、さらに家庭内独立空間の意識が進んで、家族であっても、そんなに深く交わらない、別居婚を望む人も増えています。私の知り合いでも、三十代後半で婚活はしているものの、他人と一緒に生活するのが苦手だという女性がいます。
週末だけ会う、夫婦であってもそれくらいの距離感を望む人が増えているのかもしれません。家族だからといって、全人格的な交わりが必要な時代ではありません。ライフスタイルや自我はそれぞれのものです。ある部分では濃く、他は薄い、そんな新たな家族観があってよいのです。
齋藤 孝
明治大学文学部教授