時代と共に変化している人間の距離感

元アメリカ大統領夫人のミシェル・オバマさんは、黒人で初めてホワイトハウスに入り、その飾り気のない人柄で大人気を博しました。

しかし、ホワイトハウスという特殊な環境の中で、友人と適切な距離を保つのは大変難しい挑戦です。著書、『心に、光を。不確実な時代を生き抜く』(KADOKAWA)の中で、友情について、「わたしは友情を軽く考える人間ではない。真剣に友だちをつくるし、さらに真剣に関係をつづける」と書いています。

友人はミシェルさんにとって命綱であり、友人関係のためにほかの事案を後回しにすることもあるほどなのです。彼女にとって重要なのは、「参加する」こと。

ストレスの多いホワイトハウスの生活の中で、自分の心をリセットするために、日常から自分を切り離すために行う、二泊三日の友人とのキャンプが気分転換となります。

アメリカの若者の「親しい友だちの数」アンケート結果が衝撃

そんな彼女も、「若い人たちと話すと、新しい友人関係をはじめる瞬間への不安やためらいをよく耳にする」と書いているのです。日本よりはるかにコミュニケーションスキルが高いはずのアメリカでさえ、変わり目に差し掛かっていることを示す一文で、私も大変驚きました。

「リスクを冒すのを恐れて、拒まれることを心配している」というのです。同著では、2021年の調査によるとアメリカの成人の3分の1が、親しい友人は3人未満しかいないと答えているといいます。アメリカでも、若い人はリスクを冒したくないと言って友達が増えないのです。

ミシェルさんは人と本当のつながりをつくると、すべてがやわらぐので、一歩を踏み出すことが必要だと、一対一の現実世界での関係を通じ現実の人生に触れることを勧めています。

また、ソーシャルコンボイ=社会的な護衛艦隊という心理学用語にも触れており、友達に囲まれていることによってあらゆることから守られる、社会から防御してもらえる ということも提示しています。

実際、友人というのは、話すだけでも気が楽になる存在です。友人というほどの存在でなくとも、周囲の人との日常のちょっとした交流があるだけでも、心の健康度は高まるのです。

さらに言えば、言葉を交わさずとも、いい感じに黙っている時間があることで心が溶けていくような存在が、よい友人です。