FP Office株式会社の秋元秀斗FPによると、高所得の会社員が定年後にお金で苦労するケースは少なくないそうです。「高い給与をもらえる人は老後の資金繰りもきちんと計画しているはず」と思ってしまいますが、いったいなぜそのようなケースが頻発するのか。年収1,200万円のエリートサラリーマン田中さん(仮名・59歳)の事例をもとに、予防策と解決策をみていきましょう。
年収1,200万円、タワマン住みの59歳“勝ち組”サラリーマン…年金機構から届いた〈青色の封筒〉に思わず「なにかの間違いでは」【FPの助言】
老後破産を防ぐ「家計改善」対策
そこで、FPは田中さんに、下記のように助言を行いました。
FP「田中さんの現時点での収支・資産額から今後の収支状況を試算したところ、このままでは老後、お金が大きく不足する見込みです。
男性の平均寿命である81歳時点で、2,700万円ほど資金不足が発生しています。
老後破産を防ぐためには、①支出を減らす②収入を増やす③保有資産を運用して増やす、の3つが大事になってきます」。
1.支出を減らす
総務省の『家計調査年報(2023年)』によると、単身(65歳以上・無職世帯)の1ヵ月あたりの消費支出(税・社会保険料除く)は平均14万5,430円となっています。田中さんは月約50万円の支出がありますから、約3倍の金額を毎月消費している計算です。
田中さん「たしかに、毎月の生活費は高いかも、という自覚はあります。自炊の習慣がなく、毎日外食なので食費がつい高くついてしまって……。趣味のゴルフにも月5万円ほど使ってしまっているのですが、これはきっぱり辞めたほうがいいでしょうか?」
FP「趣味のゴルフは健康のためにも継続していいかと思いますが、月の食費が20万円を超えているのは少し高いですね。15万円に抑えることはできますか?」
田中さん「はい、できると思います。食費を減らすだけでいいですか?」
2.収入を増やす
FP「いえ、それだけでは不十分です。次に、『収入を増やす』ことを考えてみましょう。
田中さんの会社では、70歳まで再雇用で働けるそうですね。ならば、70歳まで働いて年金の「繰下げ受給」を利用してはどうですか?
年金の増額率は、「繰下げ月数×0.7%」で計算できます。仮に70歳まで再雇用で働き、年金は65歳から5年遅らせて70歳から受け取るということにした場合、60ヵ月分繰下げることになります。
したがって、増額率は「60ヵ月×0.7%=42%」となり、支給できる年金月額は21.15万円×42%=30.03万円となります。
ここに加えて、65歳から70歳までのあいだは給与収入もあります。再雇用となると現在の年収からは下がってしまうかもしれませんが、預金を取り崩すタイミングを5年間引き延ばせる可能性が高いです。いかがでしょう?」
田中さん「いやぁ……なるべくなら65歳の定年で退職したいですね。後輩から色々指示されることを考えるだけでストレスだし。再雇用はしない方針でいきたいです」