「うまくけんかする」スキル

けんかは愉快なものではありませんが、かならずしも最悪の事態を引き起こすものでもありません。けんかの仕方や仲直りの仕方を教えてくれるロールモデルがいなくても大丈夫。うまくけんかするスキルを身につけることができます。ちょっとした意見の食い違いから、怒鳴り合いの大げんかまで、けんかはものごとに対処するチャンスです。怒りを積み上げるのではなく、問題が起きた時点で対応しましょう。

ある男友達は、恋人ととけんかしないことを誇りに思っていました。あるとき、彼女が二人の家のインテリアをすべて彼女好みに飾りつけました。彼は自分の居場所がないように感じました。彼の好みや趣味は一つも生かされていなかったからです。彼はそのことを訴えたかったけれど、けんかしないことが健全な人間関係の証だと信じていたので、あきらめました。その結果、時間とともに彼女への恨みをつのらせていったのです。二人の共有スペースに彼の好みがまったく反映されていないことが、二人の関係すべて――彼がその中に存在しない関係――を表しているように思えました。

彼は二人の関係に精力を注ぐのをやめ、職場の、自分の執務室で大半の時間を過ごし始めました。ついに彼がこの問題を口にしたときにはすでに手遅れ。二人の心は離れ、憤りがふくれ上がっていたのです。結局、二人は5年間におよぶ付き合いを終わらせることにしました。

うまくけんかするための第一歩は、人間関係には二つの問題があると理解することです。一つは解決できる問題。もう一つは、解決不能で、二人の関係につねにつきまとう永続的な問題です。ジョン・ゴットマンは、人間関係の対立の69パーセントは永続的なものだと指摘しました。

永続的な問題のよくある例は、カップルの片方がアウトドア派で、もう一方がインドア派というものです。あるいは、一人がきれい好きで、もう一人は片付け下手。これ以外にも、仕事や家族、将来のビジョン、お金、セックスの頻度についての見解の相違なども含まれます。

たとえば、あなたがいつも5分(あるいは10分)遅刻するタイプだと想像してみてください。かたや、あなたの大切な人は、「なにごとも早め早めに。時間ぴったりは遅刻といっしょ。遅刻は来ないということ」をスローガンとする家庭で育ったとします。時間厳守をめぐってけんかすることは必須でしょう。

この違いを乗り越えるための解決策――たとえば、別々に空港まで移動する、など――を考えるかもしれませんが、問題を解決することは不可能でしょう。ゴールは、互いを変えようと説得をすることでも、無理に合意に達しようとすることでもなく、違いを受け入れて生産的な解決策を見つけることです。

カップルセラピストの故ダニエル・ワイルは、著書『After the Honeymoon(ハネムーンのあと)』の中で、「長期的なパートナーを選ぶということは、必然的に、解決できない問題をひとそろい選ぶことである」と説明しました。

目標は、けんかしない人を見つけることではありません。うまくけんかできる相手、けんかにより関係が終わると心配する必要のない相手を選ぶことです。

うまくけんかするための二つ目の要素は、見解の相違から立ち直る力です。ジョン・ゴットマンは、「修復の試み」として、けんかが激化するのを防ぐための発言や行為について書いています。うまくいっているカップルは、冗談を言ったり、譲歩したり、相手に感謝の気持ちを伝えたりして、けんかの熱を冷ますことができるのです。

【パートナー選びのための大切なヒント】
誰を選ぼうとも、見解の相違は避けられないことを覚えておいてください。けんかの仕方に注意を払いましょう。自分の気持ちを相手にきちんと伝えられますか? 自分の声が相手に届いたと思いますか? パートナーはけんかを和らげるために修復的な試みを実施しますか? 目標は、けんかを完全に避けることではなく、うまくけんかすることです。