「活躍している姿を見せたかった」両親への“想い残し”

――平泉さん演じる鮫島は客と対話を重ね、彼らが抱える“想い残し”のためには、カメラマンと被写体の関係を超えてまで奔走します。平泉さんが自身を振り返って「想い残し」について思うことなどはありますか?

平泉:もう想い残すことだらけですよ。「想い残し」だらけなんだけど、大きなことで言えば、高校を卒業してホテルで働いていたのですが、ホテルを辞めて両親に「お父ちゃん、お母ちゃん、俺役者になるから」って言ったときに親父が後から「考え直してくれないか?」と言ってきたんです。

でも、若かったし「大映フレッシュフェイス」にも受かったし、晴れて大映に入り、「自分で頑張るから」と言ったんです。僕は20歳をすぎたころ、お袋が、その10年後に父親が亡くなり、僕が活躍しているところを見せてあげられなかったのが心残りというか、一番の「想い残し」になりますかね。

※後編に続く。

<プロフィール>
平泉成(ひらいずみ・せい)
1944年6月2日生まれ、愛知県岡崎市出身。1964年大映京都第4期フレッシュフェイスに選ばれ『酔いどれ博士』(66/三隅研次監督)で映画デビュー。以降、映画・テレビドラマ・ナレーターと幅広く活動、その個性的風貌からの存在は多くの人に愛されている。主な作品として、『書を捨てよ町へ出よう』(71/寺山修司監督)、『その男、凶暴につき』(89/北野武監督)、『失楽園』(97/森田芳光監督)、『蛇イチゴ』(03/西川美和監督)、『花とアリス』(04/岩井俊二監督)、『誰も知らない』(04/是枝裕和監督)、『シン・ゴジラ』(16/庵野秀明総監督)、『天気の子』(19/新海誠監督)、『マイスモールランド』(22/川和田恵真監督)などがある。秋山純監督作品としては『20歳のソウル』(22)以来の出演。

『明日を綴る写真館』ストーリー

さびれた写真館を営む無口なカメラマン・鮫島(平泉さん)。彼の写真に心を奪われた気鋭カメラマン・太一(佐野さん)は華々しいキャリアを捨て、弟子入りを志願する。家族とのコミュニケーションすら避けてきた太一は、訪れる客と丁寧に対話を重ね、カメラマンと被写体という関係を超えてまで深く関わる鮫島の姿に驚きを隠せない。人々の抱える悩みや問題のために必死に奔走する鮫島に振り回されながらも、自分に足りないものに気付き始める太一。同時に、鮫島とその家族にも目を背けてきた“想い残し”があることを知る。変わりゆく太一が、悔いのない未来のために踏み出した一歩とは……。

佐藤浩市さん、吉瀬美智子さん、高橋克典さん、田中健さん、美保純さん、赤井英和さん、黒木瞳さん、市毛良枝さんら日本を代表する俳優陣と、嘉島陸さん、咲貴さん、田中洸希 (SUPER★DRAGON)さんら若手の気鋭キャストらが脇を固めます。



コピーライト:(C)2024「明日を綴る写真館」製作委員会(C)あるた梨沙/KADOKAWA
配給:アスミック・エース