日本のほとんどの家庭にあるといわれている「家紋」。戦国時代の武将をイメージする方が多いと思いますが、現代でも紋付袴に家紋を入れるなど、日本ならではの文化として残っています。そもそも家紋とはいつごろなんのために生まれ、どんな意味が込められているのでしょうか? 山陰地方で呉服店を経営、和と着物の専門家である池田訓之氏が、意外と知らない「家紋」について解説します。
なぜほとんどの家紋のモチーフは「草木」なの?
日本人には、ご存じのとおり、和の心が流れています。それは、万物に神様を感じて感謝する心です。そして周りの人や物のすべてに神を感じるから、自己主張よりも調和、つながりを重んじます。
分家すれば新しい家紋をつけますが、本家からの流れがわかるように本家の家紋を少し改変した新しい家紋をつけるというのが、暗黙の改変ルールになっています。家紋は5,116種類あるといわれていますが、わずかな違いのものがほとんど。まとめていくとたったの241種類に凝縮できるそうです(ウィキペディアより)。
そのなかでも、特に人気の10大家紋はといえば、
・柏紋
・片喰紋
・桐紋
・鷹の羽紋
・橘紋
・蔦紋
・藤紋
・茗荷紋
・木瓜紋
・沢瀉紋
を指します。紋はもともとその時代の権力者が備えていたものなのに、ほとんどが草木なのです。鷹の羽(たかのは)は、鷹という強い動物を表しています。しかし、あとの9個は、草木です。
柏は、新しい葉が生えないと古い葉を落とさないということで縁着がいい。片喰の三つの葉は、人柄、知力、子孫繁栄を指す。桐は鳳凰という気高い伝説の鳥がとまる神聖な木。橘は理想卿にある果実で長寿と元気な子供をもたらす、蔦や藤はつるが伸び広がるので子孫繁栄、茗荷は薬草で身を守る、木瓜も鳥の巣で卵がたくさんできることから子孫繁栄、沢潟は葉の形が槍の先に似ているので勝ち運をひきよせる、といったそれぞれに意味があります。
つまり、権威や偉ぶるために家紋の柄を選んだのではなくて、ほとんどが家の繁栄や健康、幸運を祈って家紋を選んでいるということなんです。