映画やドラマがおもしろいと、誰かに伝えたくなるものです。そのときに「さわりの部分だけ説明するとね…」と言って、冒頭がどんなストーリーなのか話すこともあるでしょう。しかし本来「さわり」は「冒頭」という意味ではないのです。このように、日本にはいつの間にか元と違う意味で浸透してしまった言葉があります。今回はそんな日本語の本来の意味について解説します。
「さわり」って、冒頭のことじゃないの!?
「話のさわり」
映画やドラマなどのあらすじを人に伝えるのは、とても難しいことです。聞いている人を飽きさせないようにうまく説明することは、ほとんどの人ができません。
さて、どうしても映画の内容や楽曲のよさを伝えたいときに、「ちょっとだけ、さわりの部分を教えようか」と言ったりすることがあります。みなさんは、どの部分を相手に伝えようとしますか。
なんと、映画の出だしの部分、歌の出だしのところだけを話したり、歌ったりする人がとても多いのです。
「さわり」は、「出だし」「始めの部分」のことではありません。「さわり」は、漢字では「触り」と書きます。つまり、もっとも人の心に「触れる」部分のことを言うのです。映画であれば「一番盛り上がるところ」、歌で言えば「サビ」と呼ばれる部分のことなのです。
平成19(2007)年度の「国語に関する世論調査」では、すでに55%の人が「さわり」を「話などの最初の部分のこと」と答えています。間違った使い方をしている人が、正しい使い方をしている人をすでに超えてしまっている状態なのです。
もしかしたら、いつのまにか、正しい使い方が忘れ去られてしまうのではないかと思われます。