尊敬語は、原則「人」が対象

花に水をあげる…×

花に水をやる…〇

江戸時代、第五代将軍・綱吉は「生類(しょうるい)憐(あわれ)みの令」という多数のお触れを出したことでよく知られています。捨て子、病人、高齢者はもちろんなのですが、犬、猫、鳥、魚、貝や虫まで保護して、大事にしなさいというのです。

当時を題材にした時代劇には、よく「お犬様」という言葉が出てきます。「犬」に尊敬丁寧を表す「お」や「様」を付けるなんて、馬鹿げたことだと当時の人は思っていたようです。

そういう点から言えば「花に水をあげる」「犬に餌をあげる」という言い方は間違いです。「あげる」は、「与える」「やる」の謙譲語で、本来は目上の人に使う敬語だからです。花や犬に自分がへりくだるというのは何だかおかしいことですね。

自然界に、「対等」に存在する人、花、犬、猫という観点からすれば「上下」の関係はありません。そうであれば、「花に水をやる」「犬に餌をやる」でいいのではないでしょうか。

しかし、目上の人に「おみやげをあげる」と言うのは間違った言い方です。こんなときには「おみやげを差し上げる」と言わなければなりません。