人は「わからないこと」を拒絶したくなる

人間は、「理解できないもの」つまり「異質なもの」に遭遇すると、大きなストレスを感じます。こちらのペースを崩し、現在の状態に影響を及ぼし“変化させてしまう”可能性があるからです。

人間は“変化”をとても嫌うのです。

「変わったほうがいいだろうな」と思ったとしても、変化することを恐れるのです。その理由の一つとして、人間には「恒常性機能」というものがあります。これは、「常に変わることなく、一定の状態を保つ機能」というものです。

例えば、心拍は1分間に60回前後で安定していますし、体温は36度前後を維持しています。呼吸も1分間に15回ぐらいです。これらは意識しなくても、ありがたいことに一定を維持してくれているのです。なぜならば、生命を維持するためには一定を保ち続ける必要があるからです。

風邪のウイルスが体内に入ってくると、免疫機能が働きだし、ウイルスをやっつけるために38度や39度ぐらいまで発熱しますが、やっつけてしまえば再び36度で安定します。100メートルを全力疾走すると脈拍は120ぐらいまで上がり、不足した酸素を筋肉に送ってくれますが、酸素が行き渡ればまた60で安定します。

つまり、“変わる”ということは異常事態であって、恒常性機能はたちどころにその異常を察知し、元の安定状態に体を維持しようと働くのです。

そして、人間には身体の恒常性機能だけではなく、“心の恒常性機能”もあります。これは身体とあわせて“生命の恒常性機能”と言うべきもので、やはり「変化」を「異常事態」=「不安」と感知し、元の状態に戻そうと、変化しないように必死で抵抗します。変化しないほうがリスクも少なく、不安からくるストレスを受けずに済むからです。

ですから、あなたが「変わったほうがいいなあ」と頭でいくら考えたとしても、本能では不安とストレスを感知しますから、変わることを拒絶してしまうのです。

出所:『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)より抜粋
心の恒常性が“変化すること”を避ける 出所:『「嫌いな人」のトリセツ 人付き合いがラクになる37の習慣』(総合法令出版)より抜粋

さて、イライラする「苦手な人」にこのことを重ね合わせてみてください。あなたと“異質なもの”を持っている相手と遭遇すると、あなたの恒常性機能は反応し、“異常事態”と察知するはずです。だから、思わず「信じられない!」「理解できない!」という言葉が出てきます。

しかし本当は、「理解できない」のではありません。その相手から影響を受ける、あるいは変わることがストレスになるため、自分の肌に合わないものは、“わかりたくない”“受け入れたくない”という拒絶の心理が働くのです。