その「ひと言」がすべてを変える

「素直でなければ、人間関係はうまくいかない」と述べましたが、“素直”とはいったいどのような気持ちや状態なのでしょうか。まずそのことがわからない人のほうが多いはずです。

例えば、あなたから見てまだ知識・技術とも未熟な後輩がいるとします。彼に仕事を依頼しましたが、案の定あなたが期待をした結果が出ませんでした。彼は同じような内容の仕事を、今までに幾度か経験しているはずです。それなのに、今回もうまくやれなかったわけです。

そのことにイライラしたあなたは、

「何度やったらできるようになるんだ! やる気はあるのか!」

と思わず叫んでしまいます。後輩は黙ってうつむいたままです。あなたに叱られたことにショックを受けているのか、反省しているのか、受け流しているだけなのか、固まったまま動きません。

その様子にあなたはさらにイラ立ち、

「ボーっとするな! わかってんのかよ!」

と声を荒げてしまいました。そのあとは何とも言えない空気が職場に残り、他のメンバーも、あなた自身も嫌な後味を引きずっています。

さて、後輩にイラ立ち、怒りをぶつけてしまったあなたの“素直な気持ち”は何だったのでしょう。

①指導したはずなのに、自分の思うように仕事をしない後輩が憎たらしい。

②少ない人員で成果を上げろ、という上からの指示を果たせないと、自分の評価が下がるかもしれないという不安。

③何度も同じことで指導をする時間的・精神的余裕がないので困る。

④彼が成長しなければ、他のメンバーの負担が減らないのではないかという心配。

⑤良いチームワークで仕事を進め、高い成果を出せる職場にする、という理想に近づかないことに対する焦り。