金融広報中央委員会「家計の金融行動に関する世論調査」[単身世帯調査](令和5年)によると、50代の38.3%、60代の33.3%が「金融資産を保有していない」そうです。平均寿命が延び、老後の資金計画の重要性が高まるなか、蓄えがない状態で老後を生きるにはどうすればよいのでしょうか。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役でCFPの井内義典氏が、具体的な事例を交えて解説します。
後悔しています…〈年収600万円・貯蓄ゼロ〉の59歳サラリーマン、定年後の“長すぎる老後”に絶望→「なんとかなりそうだ」と立ち直れたワケ【CFPの助言】
「貯蓄ゼロ」で独身貴族の59歳Aさん、定年間近の“後悔”
“宵越しの銭は持たない”が信条のサラリーマンAさん(59歳)。明るく人付き合いが良いため上司・部下問わず関係なく慕われているものの、仕事ぶりはそこそこ。22歳で大学を卒業後、新卒として従業員数1,000人以上の企業に入り、長年同じ会社で勤務を続けているものの、年収は600万円ほどです。
独身を謳歌していたAさんは、仕事終わりに飲み歩くのが日課。休日も仲間と趣味のゴルフや旅行に出かけ、金に糸目をつけない暮らしぶりのため、貯蓄と呼べるものはほとんどありませんでした。
そのようななか、今年11月で60歳の定年を控えるAさんに、会社から再雇用の打診がありました。再雇用を受けると同じ会社で65歳まで勤務することができます。しかし、給与は現在の半分ほど、約300万円になるそうです。
「再雇用はありがたいが年収半分はキツイな……そういえば、年金ってどれくらいもらえるんだろう?」そう思ったAさんは、家にあった「ねんきん定期便」を改めて確認。すると、65歳以降の年金受給額は月16万円ほどでした。Aさんはこれまで年金や老後のことに無頓着でしたが、ここにきて「この収入でどうやって生活すればいいんだ!?」と、ひどく動揺したそうです。
困ったAさんは、FPである筆者のもとに相談へ。ひととおり話を聞いた筆者は、「平均寿命を考えると、あと25年近くありますからね」とぽつり。するとAさんは、「え、あと25年!? しかも平均ってことは、それより長生きする可能性も全然あるってことじゃないか……」と絶望の表情に。
「節約ばかりのつまらない人生は送りたくない。でも、いまさらながらお金のことが心配になってきて……なんとかなりませんかね?」と涙目です。
そこで筆者はAさんに、次のように助言を行いました。