人生100年時代といわれるいま、定年後も再雇用などで勤務可能な企業が増えています。とはいえ、60歳での完全引退を考える人も少なくありません。高校卒業以来がむしゃらに働いてきたAさん(59歳)もそのひとりです。しかし、日本年金機構から届いた封筒に愕然。老後のプランが大きく揺らぐことに……いったいなにがあったのでしょうか。株式会社よこはまライフプランニング代表取締役でCFPの五十嵐義典氏が解説します。
高卒・たたき上げ→執行役員まで出世した年収1,200万円・59歳の“やり手”サラリーマン、日本年金機構から届いた“青色の封筒”に思わず「なにかの間違いでは」【CFPの助言】
「定年祝いの海外旅行」に胸をふくらませるAさんだったが…
59歳のAさんは、製造業に従事しています。従業員200人ほどの中小企業ながら、高校卒業以来がむしゃらに働いてきたAさんは執行役員・本部長まで昇進しており、現在の年収は1,200万円です。会社一筋で貢献してきましたが、来年60歳で定年を迎えます。
そんなAさんには、定年後のイベントとして心の底から楽しみにしていることがあります。それは、妻のBさん(56歳)と娘のCさん(21歳・大学生)と3人で行く、自身の定年祝いと娘の卒業旅行を兼ねたヨーロッパ旅行です。
「これまで仕事ばかりで妻と娘には寂しい思いをさせてきたから、ようやくゆっくり過ごせるな」と、Aさんはこの旅行を非常に楽しみにしていました。
自宅に届いた「青色の封筒」の中身に、驚愕
ある日、Aさんが帰宅後いつものようにポストを覗くと、青色の封筒が届いていました。差出人は日本年金機構からで、「ねんきん定期便」と書いてあります。59歳の誕生月に合わせ、Aさんには封書のねんきん定期便が届いたようです。
「なんだこれ……?」Aさんは身に覚えのない封筒を疑問に思いました。
仕事中心の生活を送ってきたAさんは、これまで毎年ハガキで届いていたねんきん定期便のこともあまり気に留めていませんでした。
Aさんは妻から毎年届くものだという話を聞き、「へえ、今年はこんな封筒に入って届くのか。家計はこれまで妻に任せきりだったが、退職後は収入も減るだろうし、さすがに自分が受け取る年金くらいは把握しておかないとなぁ」と開封してみることにしました。
しかし、いざ中身を確認すると、Aさんは衝撃を受けました。65歳から受けられる老齢基礎年金と老齢厚生年金の支給見込額合計が「216万円」と書かれているのです。
「年216万円ってことは、月18万円、月18万円!? たった!? いやいや、なにかの間違いだろう」Aさんは思わずそうこぼしました。
「たしかにうちは大企業じゃないけど、給与はそんなに悪くなかったし、その分しっかり保険料も天引きされていたぞ。もっともらえるはずだろう、こんなのおかしい」とAさんは、いまの年収との落差をなかなか受け入れることができません。
「俺とおなじように中小企業で働いていた親父はそもそも60歳から年金を受け取っていたし、金額ももっと多かったはずだぞ。これが本当なら、ヨーロッパ旅行を心から楽しめないじゃないか……どうしよう」
自身のねんきん定期便をはじめてしっかりと確認した結果、老後の計画に不安を持ったAさんは、年金の正しい知識と専門家の意見が欲しいと、ファイナンシャルプランナー(FP)のもとを訪ねました。