老後に年金をもらえるかわからないし…保険料を払わなくなったAさん

58歳の個人事業主Aさん(男性)は、妻Bさん(55歳)と同じ世帯で暮らしています。Aさんは、大学卒業から30代前半までは会社員として働いていましたが、その後独立して個人事業主となりました。

独立してからは第1号被保険者として国民年金に加入しているものの、「老後に年金をもらえるかわからないし、だったら自分で貯金しておこう」と考えるようになり、国民年金保険料を納付しなくなったそうです。

日本年金機構から国民年金保険料納付について催告状や特別催告状が届いていましたが、Aさんはそれらをすべて放置。しかしある日、年金機構から「最終催告状(差押え予告)」が……このままでは、Aさんが苦労して貯めた3,000万円をはじめ、車や保険など、あらゆる資産が差し押さえられてしまいます。Aさんは差押えという「最悪の末路」を回避するため、知り合いである筆者のもとへ相談に訪れました。

「国民年金保険料の未納者」の末路

個人事業主など国民年金第1号被保険者(20歳以上60歳未満)には国民年金保険料の納付義務があり、その保険料は月額16,980円(2024年度)となります。

Aさんは事業も順調に進んでいたことから、約3,000万円の貯蓄ができていました。しかし、毎月納付しなければならないこの国民年金保険料の未納があると、年金機構から「国民年金未納保険料納付勧奨通知書(催告状)」(ハガキ)が届くようになり、それでも未納を放置していると、こんどは特別催告状が届くようになります。これらの通知で、過去2年間に未納状態となっている保険料について納付が促されるのです。特別催告状は封書で届き、その色は青色、黄色、赤色がありますが、Aさんはそれらが届いても引き続き無視を決め込んでいました。

しかし、特別催告状も放置していると、今度は最終催告状が届くことがあり、Aさんにはこの最終催告状が届いてしまったというわけです。最終催告状には、定められた期限までに納付しない場合、財産を差し押さえる旨が記載されています。

最終催告状の期限までに納付しなければ、その後に督促状が届き、その督促状が届いても納付しなかった場合、年金機構は差し押さえるべき財産の調査を行って「差押予告通知書」を送付し、いよいよ差押えが実行されることになります。

差押えは、預貯金や不動産、自家用車、加入している生命保険などがその対象になります。また、督促状に定められた期日までに支払わないと、国民年金保険料について、遅れた日数分の延滞金が発生することになります。

なお、国民年金保険料の連帯納付義務者(世帯主や配偶者)がいる場合、連帯納付義務者に対しても督促状が送付され、財産の差押えの対象にもなります。つまり、妻であるBさんも督促や差押えの対象になるのです。「まさかこんなことになるとは……なにかいい解決策はありませんかね」と嘆くAさん。

最終催告状には、納付の意思がある場合、年金事務所の窓口に相談することも記載されています。筆者からの回答としては「Aさんは至急、年金事務所の国民年金の窓口へと相談に行くこと」です。すぐに保険料を納付すれば、差押えも避けられることでしょう。