廃業を考えたことが「老後のお金」を意識するきっかけに

常連客から冗談交じりに“神の左手”ともてはやされる理容師のAさんは、先日50歳になったばかり。家業の理容店を継いで以降「死ぬまで現役」が信条でした。

しかしある日、その“神の左手”に違和感が……。不安を抱えながら病院を受診したところ、診断結果は「腱鞘炎(けんしょうえん)」でした。

いまは大したことないが、このままではいずれハサミを握れなくなるかも……「廃業」という2文字も頭によぎりましたが、現時点ではどうにか理髪店は続けられるようです。

大事には至らず安心したものの、今回のできごとを機に「老後のお金」についてまじめに考えだしたAさん。常連客ともそんな話をすることが増えたころ、あるお客さんからFPを紹介されたことをきっかけに、話を聞きに行くことになりました。

投資はイヤだ…自営業者“無理なくできる”年金の増やし方

「いま廃業したら、家のローンに子供の学費、なにより老後の生活はどうすれば……だめだ、考えただけでゾッとしました。いまから老後の収入を増やす方法はなにかありませんかね?」

AさんはFPに経緯を話し、投資は若いころに失敗した経験があるため、できれば手を出したくないこと、現時点で個人事業主の法人化は考えていないということを伝えました。

自営業のAさんが厚生年金に加入していたのは若い頃の数年程度で、現在は国民年金第1号被保険者です。そのため毎月国民年金保険料(2024年度:月額1万6,980円)を納めています。

50歳で届いた「ねんきん定期便」を見ると、将来受け取れる年金の見込額は老齢基礎年金が年間72万円程度、老齢厚生年金が年間8万円程度と記載されています。両者を合わせて年間約80万円、月額にすると6万7,000円程度になります。

Aさんは、FPから「ねんきん定期便」の内容をもとに、年金の増やし方について提案を受けることになりました。