日本各地にある源泉かけ流し温泉では、お湯にもさまざまな個性があります。手触りや香りを楽しめる、各県の名湯を見ていきましょう。温泉博士であり弁護士である小林裕彦氏の著書『温泉博士×弁護士が厳選、とっておきの源泉かけ流し325湯』(合同フォレスト)より、東海~近畿地方の源泉かけ流し温泉について詳しく解説します。
風光明媚な混浴露天風呂に“日本一の素泊まり旅館”まで…〈東海地方〉で出会う、歴史のロマン香る「源泉かけ流し」7選【温泉博士がおすすめ】
〈岐阜〉〈静岡〉〈愛知〉が誇る、屈指の露天風呂
1.奥飛騨温泉郷新穂高温泉 深山荘【岐阜県】
露天風呂が素晴らしい。開放感全開です。つり橋を渡って向かう宿への道から、露天風呂は丸見えです。川に沿って三段に造られていて、一番下は混浴、一番上と真ん中が男性専用です。女性は湯浴み着を着て混浴に入っています。男性はタオルで隠すくらいです。あまり、皆さんこだわっておらず、おおらかに入っています。
単純泉ですが、ほのかに硫黄の香りがして、湯の花もちらちらしていて、やわらかく肌になじむ良い泉質です。
混浴露天風呂に浸かっていると、川面を渡る風と川のせせらぎと一体になったような気がします。これほど川に近い温泉はめったにないと思います。雄大な自然の中の露天風呂で、心身ともに癒やされます。
2.大滝温泉 天城荘【静岡県】
アルカリ性単純泉です。ここは滝がすごい。石川さゆりさんの『天城越え』で歌われる、浄蓮の滝も近くにあります。
レンタルの海水パンツを着用します。豪快に流れ落ちる滝の音を聞いて、滝を見ながら温泉に浸かります。肌になじむ、やわらかい泉質です。
風呂上がりのしっとり感が、そんじょそこらのアルカリ性単純泉とは違います。洞窟風呂と内湯もあり、源泉かけ流しです。泉質のレベルは高いです。
夏場は滝の観光客が結構いて、観光派と温泉派に分かれます。海水パンツをはいてはいるものの、滝を見にきた観光客に丸見えなので恥ずかしい温泉です。
浴槽も多く、どこかワクワクする旅館です。
3.伊豆・熱川温泉 たかみホテル【静岡県】
ナトリウム-塩化物・硫酸塩泉です。熱川温泉は、至る所で湯煙が上がっています。湯量が豊富で源泉温度も高い。浸かると、しっとりすべすべです。
無理をした様子は見られず、普通に源泉かけ流しといった余裕を感じます。露天風呂の他、内湯もあります。
この温泉地は、かつてドラマで有名になりました。「銭の花の色は清らかに白い。だがつぼみは血がにじんだように赤く、その香りは汗の匂いがする」のナレーションで始まる『細うで繁盛記』(1970年代)です。
たかみホテルの玄関には、ビニール袋に入った湯の花が置かれています。
4.内海温泉 THE BEACH KUROTAKE【愛知県】
知多半島にある温泉です。料理のおいしいホテルで、魚介類が豊富なエリアです。
ナトリウム-塩化物泉です。敷地内に源泉が湧出して塔状になっています。
源泉は少し黒く濁っています。浸かると、肌がしっとりします。塩化物泉はベタベタする泉質もありますが、ここは湯上がりが実に爽快です。
近くに、野間大坊があります。源義朝と織田信孝が亡くなったことに縁がある所です。この話をすると、大変長くなってしまいます。「昔より主を討つ身の野間なれば報いを待てや羽柴筑前」、興味のある方はインターネットでお調べください。源義朝のお墓は、かなりインパクトがある見た目です。