初対面を「いい感じ」にする

慣れない場所での会話は、テレビ番組だけでなく、たとえばよその会社の会議室とか、見知らぬ人たちの集まるパーティとか、会食の場などでも、ドキドキするものです。とくに最初のひと言目が大事。その場の雰囲気と、相手との関係性を決定づけることがあります。

週刊文春の対談現場でも、ゲストと最初にご挨拶するとき、特に初対面の場合はそれなりに緊張します。でも、おそらく聞き手の私以上にゲストのほうがもっと緊張しているだろうと思います。なにしろアウェイですからね。「アガワ、どんなヤツなんだろう」「どんなことを聞かれるんだろう」と心の中に不安を抱きながらいらっしゃるのだと拝察します。

そんなとき、ゲストをお迎えする立場の私は、「どうか怖がらないでくださいね」という気持を込めて(本当は私も怖いのですが)、最初の対面の雰囲気をできるだけ「いい感じ」にしようと心がけます。

たとえば、大きなスーツケースを持って部屋に入っていらしたら、

「あらま。これからご旅行ですか? 違うって? 今、成田から直行なさったんですか? それはそれは。お疲れのところを恐れ入ります」

スーツケースとリュックとバッグを抱えて息を切らして現れた方を、ただ呆然と見ているだけでは失礼に当たるでしょう。率先して荷物を受け取って、部屋の隅に置くのをお手伝いしたら、改めて「初めまして」と挨拶をする。そんな順番になることもあります。

あるいは杖をつき、足を引きずりながらいらっしゃることもある。きっとここまで来るだけでさぞや大変だったでしょう。

「どうぞどうぞ。まずはおかけになって」

ソファをお勧めすると、まずお手洗いへ行きたいとおっしゃる。そんなときも「あ、お手洗いですか? ご案内します」

もちろん担当の編集者君がお連れすることもありますが、編集者君を含め、こちらはお招きするチームです。みんなでこぞって居心地のいい空間を作ろうと動く。そうすれば、ゲストも少しは安心なさるでしょう。

私とて、いつもにこやか、元気溌剌、愛想よし、というわけではありません。そのあたりは仕事仲間に調査していただければ、すぐにバレることです。

「アガワさん? 怒りっぽいよー。すぐ愚痴るし。瞬間湯沸かし器と呼ばれていたお父さん、そっくり」

そういうネット記事が載ったら、どうかがっかりせず、アガワもダメな人間なのだなあと、諦めてください。

でも、いざというときは愛想を振りまきます。張り切り過ぎてKYになることもありますが、やるときゃ、ちゃんとやります。なぜならば、私はお客様を招く役割を担っているからです。そうでなかったとしても、初めて会った方には好印象を持っていただきたいという自意識があるからかもしれません。