老後破産、8050問題…悲惨な末路を回避する「3つ」の対策

筆者はFPの観点から、Aさんに対して①収支改善②お金の寿命を延ばす方法③8050問題によって起こる悲惨な末路を避ける対策についてそれぞれ下記のように助言しました。

①固定費の見直し

老後破産を避けるためには、収支改善が必須です。まず、固定費から見直していきます。スマホの契約時に店員から言われるがまま加入したサブスクリプションサービスや、通っていないスポーツジム、入るだけ入ったまま活用できていないファンクラブなど、不要なサービスは解約して整理しました。

また、生命保険の掛け金が負担になっていることを指摘すると、「でも、息子に少しでも遺してあげたいんです」と言います。しかし、できれば保険は支払いが60歳~65歳までに終えられる「短期払い」にしておきたいところです。

また、月5万円~10万円息子に渡しているお小遣いも、思い切って見直すべきです。よく話を聞くと、そもそもBさんがお小遣いが欲しいと言ったわけではなく、Aさんのほうから自主的に渡しているとのこと。そこで、経済的に厳しい状況にあることをAさんから正直に話し、お小遣いを徐々に減らすよう助言しました。

②NISAを活用し、眠っているお金を働かせる

銀行にただ預けているだけでは、お金は増えません。そこで、お金の寿命を延ばす方法として、預貯金に眠っているだけのお金を“働かせる”という方法があります。なかでも、税制面で優遇措置のあるNISAを活用するとよいでしょう。NISAは運用で増えた利益に対して課せられる源泉分離課税が非課税となります。

NISAで投資できるのは「株式」と「投資信託」ですが、投資初心者のAさんにはインデックス型の投資信託をおすすめしました。日経平均やTOPIX、S&P500といった「指数に連動するインデックス型の投資信託」は、個別株投資よりも低リスクだと考えられています。

また、投資信託よりもさらにリスクの低い「債券」に分散投資することもおすすめです。債券は、満期まで保有することで利息と元本を受け取ることができます。最近ではマイナス金利が解除され、金利が少しずつ上昇傾向にあるため、変動金利型の国債も選択肢のひとつです。

③Bさんの自立を促す

8050問題が深刻化すると、子から親への暴力や生活困窮に起因する無理心中など、悲惨な事件が起こりかねません。こうした事態を防ぐためにも、上記の①や②でできる限りお金のゆとりを確保しながら、子どもの自立を促すことが求められます。

Aさん亡きあとも経済面で困らないよう、Bさんには正社員を目指すよう働きかけます。

また、ひとりきりの生活では、なにかあった際にすぐに困窮してしまいます。「一人口は食えぬが二人口は食える」ということわざがあるように、生活費は夫婦で暮らすほうが、独身でいるときよりも余裕ができて生活が楽になります。

そこで、Bさん本人の意向も考慮しながらではありますが、婚活も選択肢に入れることを提案しました。Bさんはまだ30歳ですから、就活も婚活もまだまだ望みはあります。

上記の話を聞いたAさんは、「なるほど、このままだと私の生活も危ないし、なによりあの子のためにならないですね。いまの状況を見たら、亡くなったお父さんに怒られちゃう(笑)。まずはできるところからやってみます。今度は息子と一緒に来ますね」と決意し、事務所を後にしました。

8050問題は、親子ともに高齢になるにしたがって深刻さが増していきます。役所や生活困窮者支援窓口、地域包括支援センターなどに頼りながら、早めの行動を心がけましょう。


武田 拓也
株式会社FAMORE
代表取締役