A家も他人事ではない「8050問題」の恐ろしさ

また、今回Aさんがワイドショーで見たという「8050問題」とは、ひきこもりの長期化により80代の親が50代の子どもを支えることで起こる社会問題のことをいいます。

定年を迎えたあとも高齢の親がわずかな年金で子を支え、経済的に逼迫した状態で相談に訪れるケースも少なくありません。

子どもが経済的に自立していないことから、親は介護が必要になっても子を頼ることができません。子も精神疾患を抱えていたり、経済的困窮や希薄な人間関係から社会的に孤立してしまうなど、複合的な課題を抱えていることもあります。内閣府が公表している令和4年度「こども・若者の意識と生活に関する調査」によると、ひきこもり状態にある人は全国で約146万人と推計されています。

また、令和元年に発表したひきこもりについての調査結果によると、自宅に半年以上閉じこもっている40~64歳のひきこもりの数は全国で推計61万3,000人いるそうです。そのうち7割以上が男性で、ひきこもりの期間は7年以上が半数を占めています。

ひきこもりになった理由には「離職」や「人間関係の悪化」が挙げられており、現在は非正規雇用で働くBさんも、人間関係の悪化が引き金となり、いつひきこもりとなってもおかしくありません。

さらに、こうした状況は周りからは認知されづらく、問題が発覚するころには深刻化しているケースがほとんどです。今後さらに高齢化が進み、生涯未婚率も上昇が見込まれていることから、こうした世帯も増加することが予想されます。

2000年頃、「パラサイト・シングル」(親と同居する未婚の子ども)という言葉が流行しました。これは親と同居する未婚の若者を意味し、当時は親と同居することで豊かに生活する若者がイメージされました。ただ昨今はBさんのように、経済的に余裕がないことから実家暮らしを選択する子どもが増えています。

そのようななか、親が現役世代のうちはそれほど問題がなくとも、年月とともに親が年を重ね介護が必要になったり、子どもがストレスや鬱、リストラなどで職を離れると、生活は困窮する一方です。年金収入だけで自分と子どもを養っていくのは現実的ではありません。

Aさんは、「息子は会社の人と馬が合わないようで、もしもリストラされたり、ひきこもりになったりしたらと思うと不安でいっぱいです」「私が家事をできなくなってしまったら、誰があの子の面倒をみてくれるのか……考えるだけでも恐ろしいです」と心配な様子でした。