医療費や介護費用など、定年後の出費がかさばるなか、退職金は会社員の老後生活において非常に重要な収入です。しかし、自分の退職金がいくらかを正しく把握している人は決して多くないでしょう。そこで、『定年までに知らないとヤバイお金の話【最新版】』(彩図社)の著者でファイナンシャルプランナーの岡崎充輝氏が、定年までに知らないと損をする退職金のキホンを解説します。
「確定拠出年金(401k)」は自分で行う年金作り
2001(平成13)年10月に、企業年金にかわる制度として、確定拠出年金という制度が日本でも始まりました。これが正直よく分からないという意見を聞きますので、ここでさらりと簡単に説明していきたいと思います。
なお、ここでは企業型を見ていきます。他に個人型(iDeCo)もあります。
企業型確定拠出年金とは、企業が掛金を毎月積み立て(拠出)し、従業員(加入者)がみずから年金資産の運用を行う制度です。
従業員が自動的に加入する場合と、加入するかどうかを選択できる場合があります。
従業員は掛金をもとに、金融商品の選択や資産配分の決定など、さまざまな運用を行います。
そして定年退職を迎える60歳以降に、積み立ててきた年金資産を一時金(退職金)、もしくは年金の形式で受け取ります。
ただし、積み立てた年金資産は原則60歳まで(会社によっては65歳まで)引き出すことはできません。
重要なのは、「掛金は企業が負担してくれるが、運用の結果はあくまで従業員の自己責任である」ということです。
運用成績によって将来受け取れる退職金・年金の額が変動します。将来の老後資金を増やせるかどうかは、従業員の方の、つまり皆さんの“運用手腕”にかかっているとも言えるわけです。
企業型確定拠出年金には税制優遇措置があります。
1つめは、運用で得た利益は全額非課税となることです。一般的な金融商品で運用するとその運用益に対しては約20%の税金がかかります。それが全額非課税となるわけです。
2つめは、積み立ててきた年金資産は60歳以降、一時金か年金、会社によっては「一時金と年金を併用」の3つの選択肢を設けているケースもあります。
どの形式でも税制優遇が受けられます。一時金であれば「退職所得控除」、年金であれば「公的年金等控除」が受けられ、税を軽減することができます。
「一時金と年金を併用」できる場合は、退職所得控除の範囲内まで一時金で受け取り、残りを年金で受け取る、なんてこともできます。
「退職所得控除」「公的年金等控除」については、どちらも普通に収入を受け取るよりも税金がかかりにくいということです。
さて、制度の内容はおおよそ理解いただけたでしょうか?
この20年で企業型確定拠出年金は企業退職金のスタンダードとなってきました。ですから以前より多くの方がご加入されていると思います。
自分の「確定拠出年金(401k)」運用成績は把握している?
しかし、「今いくらぐらい積立ができているのか?」「どんな商品で運用しているのか?」と質問するとほとんどの方が「分からない」とお答えになります。
繰り返すようですが、この制度では掛金の運用は、従業員つまり皆さんが行うことになっています。ですから、インターネット等で簡単に掛け金、現在の積立額の確認、または運用方法を指定できることができます。
もし、その方法が分からない場合は、会社の経理もしくは総務にでもすぐにお尋ねください。まだ退職までに数年あるのであれば、運用方法を変更するだけでも退職金を増やすことができるかもしれません(もちろん、運用次第で減る場合もありますが)。
運用方法を変更(掛け金配分も積立金のリバランスも)しても手数料がかからないので、ぜひ検討してみてください。
岡崎 充輝
株式会社ヘルプライフオカヤ
代表取締役/ファイナンシャルプランナー