職場で最も大切なものとは

ヘンリー・キーンは典型的な例だ。彼は勤めていた自動車工場の都合で急な退職を余儀なくされた。突然、時間と体力がたっぷりある立場になったため、手伝えそうなボランティア活動を探した。

最初は退役軍人省が運営する高齢者介護施設で、次に米国在郷軍人会と退役軍人会で活動し始めた。家具の塗り替えやクロスカントリースキーなど、趣味にも時間を割けるようになった。

だが、心は満たされなかった。何かが足りなかった。

「仕事がしたいんです!」ヘンリーは65歳のとき、研究チームに語った。

「本格的な仕事でなくていい。働けば、毎日暇を持て余すこともないし、収入にもなります。自分は働くのが好きで、人と一緒にいるのが好きな人間なんだと気づいたんです」

お金が必要だったわけではない。それなりの年金はもらっていたし、収入には満足していた。だが、お金をもらうことで、自分の活動の意味を感じていた。お金を払ってくれる人がいるということが大事だった。人は誰でも、他者にとって価値のある存在になる手段を必要としている。

また、人と一緒にいたいというヘンリーの気づきは、一つの重要な教訓、引退ではなく仕事そのものについての教訓を与えてくれる。つまり、職場で重要なのは人だ、ということだ。

職場を見回し、自分の人生に価値を与えてくれる同僚に感謝することが大切だ。仕事にはお金の問題やストレス、不安がつきまとう。だから、職場で育まれる人間関係の重要性は見過ごされやすい。

職場の人間関係の本当の大切さは、失ってから気づくことも多い。