親が高齢になると、「急に倒れたりしたらどうしよう」「生活に不便があるのではないか」など、1人にしておくのが心配になるものです。そこで選択肢となるのが、老人ホームなどの施設で余生を過ごすことです。今回は誰もが迎える高齢期の住まい探しのポイントとして、入所できる施設はどんな種類があるのか?予算の決め方はどうするか?施設を選ぶ際の注意点は?といった点を、80歳になる父の施設探しをすることになったAさんを例に、CFP®・社労士の井戸美枝氏が解説します。
年金暮らしの80歳父が“終の棲家”探し開始→「とてもじゃないが老人ホームの費用を手助けする余裕は…」不安しかない息子が一転、心の底から感謝したワケ【CFPが解説】
後回しにせず、早めに親と話し合っておくことが大切
現在もAさんは週末を利用して父と施設の見学をしています。施設の見学には1カ所あたり約90分かかり、加えて重要事項の説明をしっかり聞いておく必要があります。それなりに体力も時間も必要なことから「父が元気なうちに探し始めて良かった」とAさんは感じています。
また、見学して良かった時間帯はランチタイムでした。食事の内容、介助の様子だけでなく、職員と入居者の会話の様子など、パンフレットには載っていない多くの情報を得ることができました。
居室などの生活空間が快適かどうかも大切ですが、食事の内容、行事、サークル活動、レクリエーションなどを親自身が気にいるかどうかもポイントです。
Aさんの場合は、親の資産や希望する施設が共有されており、スムーズに施設探しが行えているケースの1つですが、それでもある程度の時間や手間はかかります。話し合いのない状態から施設を探す際は、さらに時間がかかってしまうこともあるでしょう。
また、万が一、親が病気になったり、あるいは認知症が進んだりすると、どの銀行にお金を預けてあるのか、保険には加入しているのか……など、分からなくなる可能性もあります。
Aさんの場合も、結果的にかなり恵まれた収入・資産状況だったことは幸運でした。だからこそ介護付き有料老人ホームを探すという選択もできたのです。しかし、親の年金がそれほど多くなかった、資産も少なかったとなれば、こうはいかなかったかもしれません。本来であれば、もっと早くから話し合いをしておく必要があったといえます。
元気な親に、介護や資産のことを尋ねるのは、なかなかハードルが高いことと思います。とはいえ、話し合っておいた方が良いのもまた事実。本稿のような記事をきっかけにして、話を始めてみてはいかがでしょうか。
執筆/瀧 健
ファイナンシャル・ライター
監修/井戸 美枝
ファイナンシャル・プランナー(CFP®)