相続においては、被相続人の子ども以外が相続人になるなど、複雑な流れとなるケースもあります。今回は、相続人の立場にある方がすでに亡くなっており、亡くなった方の子どもが相続する「代襲相続」についてみていきましょう。FP資格を持つ、公認会計士・税理士の岸田康雄氏が解説します。
資産家の祖父、死去…相続の話をはぐらかす叔父叔母に〈代襲相続人〉の立場の甥っ子、思わずイラッ!「私、どれぐらい相続できますか?」【相続専門税理士が解説】
先日、資産家の祖父が亡くなりました。祖母は存命です。私の父は、祖父の長男にあたりますが、10年前に亡くなっています。祖父の次男、三男、長女、次女であり、私からみた叔父・叔母たちは全員存命で、それぞれ子どもが2人います。このような場合、相続はいったいどうなるのでしょうか? 叔父や叔母たちは意地悪で、相続の話題になると、私や弟を仲間はずれにして話をはぐらかすため、イライラしています。私や弟は、どれぐらい相続できるのでしょうか。
東京都世田谷区 20代会社員
相続順位と代襲相続
代襲相続とは、本来の相続人がすでに亡くなっている場合に、その子どもが遺産を相続することをいいます。たとえば、相続発生時、子どもの立場の人がすでに死亡しているなら、子どもの代わりに孫が相続することになります。きょうだい間の相続で、きょうだいがすでに死亡していたら、甥姪が相続することになります。
法定相続人には順位があります。
まず、亡くなった人の配偶者は、常に相続人になります。第一順位は子ども、子どもがいなければ、第二順位は父母、父母がいなければ、第三順位は兄弟姉妹となります。第一順位の子どもがすでに亡くなっている場合でも、すぐに第二順位の父母が相続人になるわけではなく、孫がいたなら孫が相続人になります。これが代襲相続なのです。
代襲相続人の法定相続分
代襲相続人の法定相続分は、代襲相続される人の法定相続分と同じ割合です。代襲相続人が複数の場合は、代襲相続される人の数によって法定相続分を均等に分けることになります。
もし、被相続人に配偶者と子どもがひとり、孫がふたりいた場合を想定してみましょう。
子どもが存命なら、配偶者と子どもがそれぞれ2分の1の法定相続分を受け取ることになります。しかし、子どもがすでに亡くなっていて、亡くなった人の子どもである孫2人が代襲相続する場合はどうでしょうか?
本来相続人となるはずだった子どもの相続分である2分の1を、2人の孫で均等に分けるため、孫1人当たりの相続分は、4分の1ずつとなります。
また、死亡保険金や死亡退職金の非課税限度額は、500万円に法定相続人の数を乗じた金額であるため、代襲相続人が2人の場合、法定相続人の数が1人増え、非課税限度額が大きくなることもあります。
代襲相続人の遺留分
代襲相続人の遺留分は、被相続人の子どもと代襲相続する孫だけに認められます。
その場合の孫の遺留分は、法定相続分の2分の1となります。兄弟姉妹の代襲相続をする甥姪には、遺留分はありません。
代襲相続人と基礎控除の計算
基礎控除額は、3,000万円と、600万円に法定相続人の数をかけた金額との合計額です。
相続人の数が多ければ多いほど、基礎控除額も大きくなるため、代襲相続人が法定相続人となった場合は、基礎控除額が増加するケースも考えられます。
養子の子と代襲相続
代襲相続の相続人に養子がいる場合、通常の代襲相続と比べて注意が必要な点があります。
被相続人の養子は、子どもとして第一順位の相続人になるのは当然なのですが、もし養子がすでに亡くなっていた場合、相続人となるはずだった養子の子どもは、代襲相続人となれるのでしょうか?
この場合、養子縁組したあとに生まれた子どもは代襲相続人となりますが、養子縁組する前に生まれた連れ子は、代襲相続人にはなれません。
もし負の遺産があった場合、相続放棄を検討する方もいるでしょう。では、相続人が相続放棄を行うと、代襲相続はどうなるのでしょうか? この場合、代襲相続は行われません。子どもが相続放棄を行ったときに、孫が代襲相続することはないのです。
岸田 康雄
公認会計士/税理士/行政書士/宅地建物取引士/中小企業診断士/1級ファイナンシャル・プランニング技能士/国際公認投資アナリスト(日本証券アナリスト協会認定)
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