改定が繰り返されて年々複雑になる年金制度。専門家であってもすべてを網羅することは至難の業でしょう。とはいえ、自分に関係する部分の把握を怠ると、大切な「老後収入」が減ってしまうことも……。具体的な事例をもとに、牧野FP事務所の牧野寿和CFPが解説します。
年金減額とはなにごとだ!…月収40万円、65歳男性“働くほど損をする”年金制度に大激怒。思わず「給与カット」を望んだワケ【CFPの助言】
怒りが収まらない…Aさんが考えた「驚きの対策」
「頑張って働いているのに、働いた分だけ損をするなんて、そんなおかしな話があるか! いっそのこと給与をカットしてもらおうか」と、Aさんの怒りは収まりません。
そんなAさんの様子をみかねた妻のBさんが「誰かに相談してみたら」となだめ、Aさんは古くからの知り合いである筆者のところに訪れたのでした。
Aさんの年金受給パターンをシミュレーション
Aさんから話を聞いた筆者は、Aさんが持参した日本年金機構の「ねんきん定期便」などを参考に、3つの年金受給方法でシミュレーションしてみました。
①一部支給停止されても65歳から年金を受給する
②繰下げ受給を選択して年金を70歳から受給する
③支給停止にならない金額まで給与を引き下げて65歳から年金を受け取る
Aさんが上記の①~③のように年金を受給すると70歳までと80歳、90歳の受給累計額は次のようになります。
①一部支給停止されても65歳から年金を受給する
Aさんの65歳以降の老齢厚生年金見込額は、報酬比例部分が約163万円、経過的加算が約6万円、加給年金が40万円の合計209万円。ここに老齢基礎年金約75万円※が加わり、合計で約284万円です。
※令和6年度の満額の受給額は81万6,000円。Aさんは20歳以降の学生時代から就職するまで約3年の国民年金の未納期間がある。
しかし、ここから在職年金制度によって約33万円が支給停止。実際には約251万円(月約20万円)となり、給与をあわせると月に約60万円の収入が見込めます。
もっとも、加給年金が在職年金で停止された額を補うため、貯蓄を取り崩すことなく、むしろ資産を増やしながら悠々自適な老後生活が可能です。