(※写真はイメージです/PIXTA)

「患者さまが集まるかどうか」これはクリニックの新規開業における最大の懸念事項です。慎重に物件も選んだ、さまざまな準備も行った――。しかし開業日、待てど暮らせど来院はなく、結局開院初日の患者さまは、午前・午後に1人ずつ…。こんな厳しい事態を回避するには「開業前のプロモーション」が重要です。具体的に見ていきます。本連載は、コスモス薬品Webサイトからの転載記事です。

開業前プロモーションが「絶大な効果」を生む理由

そもそもの前提条件として、患者さまが“集まる”かどうかはクリニックの立地次第です。この選択を誤れば、患者さまは集まりません。不幸にも「集まらない立地」を選んでしまったら、“集める”ためのプロモーション、つまり集患対策が必要となってきます。

 

とはいえ、いくらよい立地を選択したつもりでも、本当に集患できるかどうかを、開院前に知ることはできません。だからこそ、リスクマネジメントとして開業前にプロモーションを行うのです。

 

最初の集患のつまずきは、一見微差に見えたとしても、実際には大きな違いとなり、のちのち大きな影響を及ぼします。

 

下記の図表1と図表2をご覧ください。開院時の1日平均患者数が、なにもせずに2名になった場合と、開業前プロモーションによる+4名増の平均6名で、その後月2名ずつの自然増とした場合の開業後24ヵ月の現金残高の推移を示しています。

 

開院月の1日平均患者数2名/診療単価6,000円/診療日数20日/1ヵ月のコスト400万円/翌月以降平均2名ずつ自然増とした場合
[図表1]1日平均患者数2名から開始した場合
出所:筆者作成
開院月の1日平均患者数2名/診療単価6,000円/診療日数20日/1ヵ月のコスト400万円/翌月以降平均2名ずつ自然増とした場合

 

開院月の1日平均患者数6名/診療単価6,000円/診療日数20日/1ヵ月のコスト400万円/翌月以降平均2名ずつ自然増とした場合 出所:筆者作成
[図表2]1日平均患者数6名から開始した場合 開院月の1日平均患者数6名/診療単価6,000円/診療日数20日/1ヵ月のコスト400万円/翌月以降平均2名ずつ自然増とした場合
出所:筆者作成

 

図表1では途中、運転資金のショートが発生してしまいますが、一方の図表2の状況は違います。そして、資金ショート後、金策に走ってどうにか継続できたとしても、24ヵ月後の現金残高の差は1,000万円以上と歴然です。こちらはかなりざっくりとしたシミュレーションではありますが、初動のプロモーションによる「患者増」が、絶大な効果をもたらすことが理解できるのではないでしょうか。

開業前プロモーションとは開業前に開業後に集める準備をしておくこと

開業前プロモーションの目的は、開業当初から患者さまをより多く集めることです。そのために、診療圏の潜在患者さまに訴求していくことが必要です。

 

そこでまず、図表3を参考にして、それぞれ患者さまをつなぐ接点となる具体的な媒体をピックアップしていきます。

 

出所:柴田雄一著『“集患”プロフェッショナル 2016年改訂版』医学通信社(2016年)より、一部加筆変更
[図表3]広告宣伝媒体とタンジェントポイント 出所:柴田雄一著『“集患”プロフェッショナル 2016年改訂版』医学通信社(2016年)より、一部加筆変更

 

開業前プロモーションとして積極的に着手してほしいのは、直媒体の活用(敷地内と建物の看板やサインの設置)です。ここで何を提供してくれるのか、周辺を通る地域住民に訴求するために、たとえば呼吸器内科なら標榜科とともに「せき」と「ぜんそく」等と表示します。これにより、喘息に苦しむ患者さまは一瞬でこの医療機関が提供する付加価値を理解します。また工事中から「〇月〇〇科開業予定」のサインを掲げておくことも効果的です。

 

内覧会も以前より行われていることですが、さらに一工夫するだけで、より有効なものとなります。たとえば医師が診察室に入り、無料の医療相談を行うことで、開業前から診察の予約を促すことも可能です。門前薬局とも連携した企画を実施するのもお勧めです。図表4の企画書例を参考に、この機会を最大活用してください。

 

なお鉄媒体(電柱や駅看板等)などは、近年では効果が限定的ですので、開業後、患者さまの動向によって設置を検討されるとよいでしょう。

 

出所:柴田雄一著『“開業”プロフェッショナル」』医学通信社(2016年)より
[図表4]内覧会プランニング項目
出所:柴田雄一著『“開業”プロフェッショナル」』医学通信社(2016年)より

「Googleに好かれる」ための準備も、開業前から

スマホの普及により、プロモーションに利用する媒体の主流がデジタルへと移行しています。ホームページ公開は当然であり、いまはその「質」が問われます。ここでいう質とは、ユーザーのスマホ検索結果における自院の出現(表示)率です。なお、開業前プロモーションは、開業の前に患者さまを集めることではなく、開業後に継続的に患者さまを集める仕掛けをつくっておくことです。そのために、現代では、デジタル・マーケティングの知識が求められます。

 

多くのユーザーは、Googleで検索するためその対応から着手します。例えば「近くの〇〇科 おすすめ」と検索すると、画面には[スポンサー]と表記されたリスティング広告(掲示されないこともある)、[場所]の地図とともに施設名等の情報が載るGoogleビジネスプロフィール、そして自然検索の結果が順番に表記されます。

 

手っ取り早いのは、有料のGoogle広告を利用する方法です。医療機関専用のGoogleアカウントを取得し、Googleビジネスプロフィールを登録すれば、数万円分キャンペーンとして無料利用できるので、開院日から開始できるよう開院前から広告出稿の準備をしてみてください。

 

また、[地図エリア]の表示確率をあげるにはGoogleビジネスプロフィールの登録は必須です。開業前に必ず埋められる情報はすべて登録しておきましょう。

 

また、開業前からホームページのコンテンツを充実させておいてください。

 

開業前にはまずこの3つの準備を行ってください。そうすることで、自然検索で上位表示される確率も上がります。

 

表題にある「だから流行っている」の前には、「やるべきことをやっている」という文字が隠されています。自らやるのもよし、プロにアウトソーシングするのもよしです。どちらの費用対効果が高いのかは、ケースバイケースでなんともいえません。

 

いずれにしても、リスクマネジメントのためにも、開業前プロモーションは重要です。順調な滑り出しができるよう、工夫を凝らしていきましょう。

 

 

柴田 雄一
株式会社ニューハンプシャーMC 代表取締役
https://2004foryou.jp/