シフト勤務の人が抱える睡眠の問題

――西野先生が今取り組んでいる睡眠の研究について教えてください。 

西野:現在の日本では交代制のシフト勤務で働く人が労働者の3割近くになっていて、勤務中の眠気や倦怠感、めまいなどの多くの問題を抱えています。

「定年コロリ」という状況があって、ずっとシフトワークしていた人が定年になった途端、亡くなってしまう。なぜそんなことが起こるかと言うと、シフトを繰り返すと年がら年中時差ボケの状態になります。仕事や睡眠のリズムとホルモンのリズム、体温のリズム等の生体リズムとズレが生じ非常に不健康な状態と言えます。

ではどうしたらいいかというと、睡眠の研究者だけではできないので、時間生物学や時間栄養学の研究者とも連携していく必要があります。さらに大事なことは、企業の経営者やシフトを管理している層の人たちとも議論していく必要があると感じています。

もちろん正解がわからなかったりもするので、議論しただけでは問題解決にはならないのですが、今まではその議論さえもなかった状態だったので……。社会としてどうしていくかも含めて取り組んでいかなければいけない課題だと思います。

――まだまだ課題が多いのですね。

西野:やはり、睡眠が大事と言われ出したのはここ30年ほどのことです。特に日本の場合は文化的な背景、例えば「勤勉」とか「睡眠時間を削っても勉強をしろ」などの美徳があるので睡眠の重要性が無視されてきた面は否めないと思います。

それに、例えばジョギングは外に出てスポーツウェアを着て一生懸命走っていたら目立ちますが、睡眠は人にみせたりするものではないので、重要視されてこなかったという事情もあります。睡眠について社会全体でどう取り組んでいくかが大事だと思います。

矢野経済研究所「スリープテック市場に関する調査を実施(2023年)」

西野精治

スタンフォード大学医学部精神科教授/睡眠生体リズム研究所所長

株式会社「ブレインスリープ」創業者 兼 最高研究顧問