誰もが直面する「親の介護」。そんな日が来ることが想像できず、「もし親に介護が必要になったら」の準備ができている人はどれほどいるでしょうか。実際に親の介護に直面したら……頑張りすぎて限界を迎えることも珍しくありません。そのようなときは、国の制度に頼ることも選択肢のひとつです。株式会社FAMORE代表取締役の武田拓也FPが具体的な事例を交えて解説します。
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介護離職だけはやめておけ…筆者が必死に止めるワケ
介護離職には、大きく分けて次のようなリスクがあります。
①介護は「いつ終わるか」がわからないため、家計の破たんに直結する
②親は子どもに対して罪悪感を抱いて気持ちが沈む
③常時介護していると虐待の可能性が高まることがある
①介護は「いつ終わるか」がわからないため、家計の破たんに直結する
公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実施調査」によると、介護期間は「4~10年未満」が31.5%(前回28.3%)と最も多く、平均は5年1ヵ月となっています。
しかし、同調査では「10年以上」の割合も17.6%と、介護期間が10年を超えて長期にわたるケースも珍しくありません。介護は「いつ終わるか」が不透明ななか、収入を失うというのはあまりにもリスクが高すぎます。
さらに、介護が終わってからいざ再就職しようとしても、よほど特別なスキルがない限りはうまくいかず、また就職できたとしても収入は大幅減となるケースがほとんどです。親の介護が終わったと思ったら自分の生活が成り立たない……介護離職がきっかけで、最終的に生活保護受給者となる人もいるのです。
②親は子どもに対して罪悪感を抱いて気持ちが沈む
Aさんの母親の口癖は「あんたは自分の好きに生きなさい」です。親のために介護離職を決意することは一見親孝行だと思うかもしれませんが、親からすると「自分のせいで申し訳ない」という気持ちに苛まれます。そのような状態で毎日24時間の介護をしていると、お互いの精神面に悪影響をおよぼしかねません。
③常時介護していると虐待の可能性が高まることがある
厚生労働省によると、家族や親族による被介護への虐待件数(16,669件)は、養介護施設従事者等による虐待件数(856)のおよそ20倍にものぼります。「親のために」と強い決意で介護をはじめても、長期間にわたり不慣れな家事や介護が続いた結果、心身ともにストレスが溜まり、虐待に走ってしまうケースは決して珍しくないのです。まずは1人で抱え込まずに、介護職との連携を図りながら無理のないペースで介護をすることが重要だといえるでしょう。